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第9分科会 悲劇のヒーロー気取りから、炎のセットアッパーへ ~青年部活動を通じて確立した自分理念~

 みなさん、こんにちは。小川真平です。今年37歳になります。㈱サンモルトは昭和24年に祖父が創業しました。父を経て私が3代目、今年で69期となります。
 会社は、福山市鞆町にあります。昔から船具、今では造船ですが、船に関わる産業が盛んで、そのような背景があり、祖父が鉄工所向けのガスの販売を、昭和40年頃からは、家庭用プロパンガスの販売も始めました。そして、一般家庭との密接なつながりの中で、父の時代から住宅のリフォームが始まりました。
 
父の死と代表就任
 
 大学を卒業し、神奈川県のリフォーム会社に入社して2年目の2006年8月、母から「父が倒れた、すぐに帰りなさい」と電話がありました。父はすでに意識なく、もう長くはないことが分かる状況で、そのまま8月20日に亡くなりました。「なぜ、僕がこんな目にあわないといけないのか」、正直、どうしていいか分からない状況でした。
 そうは言っても現実は待ってくれません。母は「神奈川に残るのもよし、帰ってきて後を継ぐのもよし」と言ってくれました。少なくとも後を継ぐという思いがあったので、すぐに帰ることを決断しました。しかし、強い決断ではなく、帰ろうかなという程度の甘い決断でした。
 2007年1月に帰ると同時に代表取締役社長としてスタートを切りました。ただ、代表とは名ばかり。現場で汗を流す日々を送っていました。
 その年の8月の決算のときに、とある社員から「話がある」と呼び出されました。当時は、社長とも、小川さんとも呼ばれず、真平くんと呼ばれていました。「この会社、これからどうしていきたいん?」というストレートな質問でした。正直、私は何も答えることができませんでした。
 
悲劇のヒーロー
 
 同友会へは2007年3月、取引先の会員に進められ、入会しました。
 毎月、例会には参加しました。役員研修大学にも割と早くから参加しましたが、参加していることがすごいだろうという感じでした。そんな私にベテラン会員の方が「同友会で学んだことをきちんと会社に生かさないと会社は変らないよ」と忠告してくれましたが、残念なことに、当時の私はこの言葉の意味が分かりませんでした。
 その頃はまさに悲劇のヒーロー気取りでした。地元の先輩会員のみなさんは、「よく帰ってきたな」と声をかけていただけたのですが、逆に私はその言葉に甘えていました。
 
自分の存在意義は?
 
 2008年2月に地区例会で、「若くして急遽社長となった悩み不安」というテーマで報告しました。しかし、その例会で指摘されたのは「今、やっていることは社員と変らないよ」というものでした。自分自身、現場で汗をかいて仕事をしていると、やっている気になっていましたし、社員と向き合うことがいやで現場に逃げていました。
 そのアドバイスを受け、私は現場から引くことにしました。先代の社長が現場に入らなくても回る仕組みをつくってくれていたので、私が現場を離れても大きな影響はありません。しかし、そのことは私にとってつらいことでした。自分の存在価値がない、自分は必要なのか、自己嫌悪に陥り、ますます、社員さんとのコミュニケーションはとれなくなり、社内で孤立していきました。
 
青年部の仲間に詰められて
 
 2009年に青年部入会、班長も引き受けました。8月例会「体験発表」の担当でしたが、報告者が決まらず、苦肉の策で報告者を引き受けることになりました。
 例会の準備を進めると「で、おまえはどうしたいん?」と詰められ最後は徹夜で思いをまとめることになりました。「今の思いは、会社を継続すること、会社を潰さないこと。自分のせいで会社を潰したと思われたくない」という自分本位の内容でした。
 すると今度は、「その思いを社員に伝えろ!」と言われました。実はこのことが私が一番逃げてきたことです。社員からどう思われているか、社長としてちゃんと見られているか、そんなことばかり気にして、全然向き合えていませんでした。青年部のグループメンバーのお陰で、逃げられないところまで追い詰めてもらい、社員に伝えました。
 社員から帰ってきた言葉は、「同じ方向を向いて進んでいきたいというけれど、社長がどの方向を向いているのか分からない」「社長がやりたいことを明確にしてほしい」「みんなが同じ思いでないと、みんなの会社にはならない」などでした。恥ずかしながら社員と思いの交換がようやくできました。2009年のことです。悲劇のヒーロー気取りの仮面がようやく1枚剥がれました。
 その時、役員研修大学での言葉を思い出しました。「同友会で勉強したことを実践しないと会社は変らない」。あの言葉が腹に落ちました。同友会で学んだことを実践しようと思いました。
 
ヒーローの仮面が剥がれる
 
 例会で聞いたこと、例えば社員の誕生日は半休、社内報を発行し情報共有、また社員からの提案、社内全館禁煙なども即実施しました。けれど社員の中から反対の声が出るとすぐにやめました。すべて場当たり的で、同友会で学び実践しているつもりの自分に満足していました。
 そんな中、振り返れば効果があったことがあります。それは社内アンケートと個人面談の実施です。これをやらないと自分も会社も変らないという思いでやりました。
 アンケートには、「紙面上の意見も大切だと思いますが、もっと、みんなと話をしたほうがいいと思います」「社長はコミュニケーション不足」「自分から会話しようとしないのは、興味がないから、仲間ではなくただのスタッフだと思っているから」など、今読み返しても堪えます。
 個人面談はやめたい気分になりましたが、アンケートを読んで開き直り、勇気を振り絞って面談を始めました。
 2010年8月の社内の飲み会の時に、ある社員が酔っ払った勢いで父が亡くなったときの話をしました。
 社員が集まって話をしたらしいのですが「これから社長の息子が経営者として帰ってくる。その若い社長が一人前になるまでは、わしは社長を支えると決めたんじゃ」と話したそうです。
 この話を聞いたとき、ボロボロと泣いてしましました。今でも思い出すと涙がこぼれてしまいます。うれしいという気持ちもありましたが、それ以上に自分が無茶苦茶情けなかったです。そう思ってくれている社員がいるのに、自分は何をしているのか。改めて自分のクズっ振りを突きつけられました。ヒーローの仮面はすべて剥がされ、裸になることができました。


 
「思い」「覚悟」固まる
 
 2011年になると、社員との面談を重ね、いろいろ見え始め、いい会社をつくりたいという思いも持ち始めていましたが、それでもまだ、会社を潰したくないという思いが強い状況でした。そんな時、お客様から1枚のはがきをもらいました。
「サンモルトさん、先日は本当にありがとうございました。(略)どんな小さな仕事でも気持ちよく対応してくださり、スタッフの素敵な笑顔の後ろに社長様の姿が見えました。高齢者の多い鞆の浦を今後もよろしくお願いします」純粋にうれしかったです。今までは自分のこと会社のことしか考えていなくて、ちゃんとお客様と向き合えていないことに気づかされました。
 この手紙から、我が社はちゃんと役に立っているし、地域の人にとって、もっとなくてはならない会社にしていかなければ、鞆を元気にしたい、高齢化の進む鞆町で困っている方の役に立ちたいという思いが固まりました。
 自社では経営シナリオという経営指針の少しやさしい版をつくっています。会社の将来や鞆を元気にしていくこと、地元に役立つ会社づくりなどいろんなことを詰め込んだ冊子です。
 今まで呼び出されていた社員を今度は私が呼び出し、2人で話をしました。「自分はこのシナリオに人生をかけるので、あなたの人生を私に預けてくれませんか?」と話しました。その社員は「分かりました」と素っ気ない返事で、その場は分かれました。するとその日の20時頃、その社員からメールが来ました。「さっきは、照れくさくて言えなかったけど、メチャクチャうれしかったです。一生ついていきます」というメールでした。これでようやく社員に思いを伝えて、いっしょに進んでいけるんだと思いました。
 やっと、私自身が社員と共に歩んでいく環境が整った、私自身の覚悟が決まりました。

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