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第7分科会 廿日市市産業振興基本条例を地域に広げるには ~廿日市市のビジョンから地域の未来を考える~

左から永田英嗣氏、細川匡氏、野原建一氏

パネリスト 永田 英嗣氏(廿日市市環境産業部長)
            細川  匡氏(廿日市商工会議所会頭 デリカウイング㈱ 代表取締役)
コーデイネーター 
            野原 建一氏(県立広島大学名誉教授)

 第七分科会はパネルディスカッション形式で開催されました。以下、三名の報告をかいつまんでご紹介します。
 
野原 この分科会は「廿日市市産業振興基本条例を地域に広げるにはどうしたよいか」についてパネルディスカッションを開催します。廿日市の条例は広島県内で最初につくられました。
 廿日市市の作成意図や方針、地域の特性をどう生かすか、また、条例とは何かについて皆さんと考えたいと思います。

■廿日市市産業振興基本条例とはなにか-条例ができるまでの流れ-

永田 全国的に地方分権化の流れで、地方交付税が減り、各市町は財源を独自に獲得する動きがあります。そこで、各市町で独自の産業ビジョンを作成していく流れができました。
 日本は人口減少がはじまりました。廿日市市も消滅可能都市に選ばれました。市の人口も二〇一〇年には一一万四千人が二〇四〇年には八万九千人と予測されます。
 廿日市市は平成一九年に商工業活性化ビジョンを作成。二五年に理念を明文化しました。また、二六年に「まち・ひと・しごと創成法」がスタート。二八年から廿日市市まち・ひと・しごと創生総合戦略をスタートさせました。その中で個別計画としてまとめたものが廿日市市産業振興ビジョンです。
 我々は、廿日市市の産業の特徴を調査し、ビジョンを作成しました。調査から市、産業界、市民も同じベクトルに立つことの重要性を認識しました。
 新しく市の産業振興計画を作る中で、今までのビジョンを総括して、産業振興条例の制定を議論し、今年度四月一日に条例として施行しました。
 廿日市市の産業振興の理念がしっかりあったから、条例が制定できたと思います。市も産学金官の協働をバックボーンとして産業振興を考えています。小規模企業振興基本法が成立し、国が中小企業支援を進めていた流れに乗れました。
 条例の制定により、市の担当者が変わっても産業振興がまちづくりの重要な柱として位置づけられます。条例の条文に「市・市民の責任の明確化」を入ています。プラットフォームの産業共創会議で多様な主体が連携し協働で廿日市のまちづくりにつなげていきます。

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■産業振興基本条例はなぜ必要なのか。

野原 経済団体、企業の立場から条例についてどうお考えでしょうか。
細川 条例は企業の自立や連携をサポートするものだと思います。商工会議所、同友会は条例の活用を促す組織です。
 企業の自立が根底にあり、行政は企業のビジネスを助けられません。条例の活用には働く人すべての個々の成長、組織の成長のための連携が必要と考えます。
 我々の課題として、条例をどれだけの人が知っているか、組織で知らしめることです。そのため会員を増やしていくことです。情報を共有化し全員参加で臨むこと、一人ひとりが条例に対し、真摯に取り組むことも必要です。
 ある調査で中小企業が経営相談をどこの機関に相談したかというアンケートがあります。60.4%が経済団体、20%が市、25%が民間金融機関でした。
 商工会議所、行政、金融機関はもっと門戸を拡げ、頼って良かったと支援できる機関にしていかなといけません。

■条例を地域にどう活かしていくのか? 地域や小規模事業者のメリットは?

野原 企業・経済団体の立場を聞きましたので、市として条例活用の施策を教えて下さい。
永田 廿日市は高齢化が進行しています。今まで廿日市はベットタウンとしての機能が強かったです。今後は廿日市市で働き暮らすホームタウンと変わっていきます。
 廿日市市の地域の多様性や特性、資源、ネットワークを発信し、企業の経営情報に活かせるようにしていきます。廿日市市の魅力を市外へ伝える「はつかいち広域経済都市圏」を確立し、推進組織として、産業プラットフォームを構築します。ワンストップで情報共有ができるようにします。
 行政機関としては産業振興審議会を興し、PDCAサイクルを管理します。
野原 市の今後の活動が期待されますが、行政組織の情報共有が縦割り組織では十分ではないようです。どのように対処されますか。
永田 行政組織が分かれると共有できない課題もあります。廿日市市のプラットフォームでそれを払拭したいです。廿日市市に三つの商工会と商工会議所があります。横連携が少なかったと思います。今後、連携を増やしていきたいです。
野原 商工会議所として加盟されている中小企業者のみならず小規模事業者にとっての課題は何でしょうか。
細川 廿日市商工会議所の会員数に目を向けると会員は微増しています。退会者を分析すると、八割が廃業、二割が役にたっていないという理由です。
 職員が訪問や経営相談を受けていますが、相談内容の情報共有が組織内で大切と思います。また、企業と地域の関わり合いも必要です。
 商工会議所に所属するメリットを出して行かないといけないと感じます。そのためには商工会議所の事業に優先順位をつけて実行していきたいです。

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■これからのまちづくりに条例をどう活かしていくか

野原 地域活性化についてどう考えでしょうか。廿日市では各種のイベント事業として、けん玉競技会やトライアスロン、カキ祭りを開催されています。
 また、地域の創業支援やニュービジネス支援など雇用環境の拡充について教えて下さい。
永田 廿日市を盛り上げていくには、多様な主体の協働が必要です。発展の方向性は条例が繋ぎます。金融機関の創業支援の活用も必要です。理念やビジョンをプラットフォームで活かすことで、市民と企業と一緒になり、イベントも起こり、成果も生まれます。
 市はビジョンとして九つの施策の方向性(①地域資源活用、②にぎわい創出、③観光の総合産業化、④六次産業化、⑤都商・輸出、⑥新事業創出、⑦創業・承継、⑧多様な働き方、⑨生産基盤・都市基盤の整備)を実施します。特に農林水産業の六次化も進めていきます。
細川 六次産業化は廿日市の活性化につながると思います。宮島だけでなく、吉和の振興もできます。廿日市は広域合併で三つの商工会と商工会議所が連携し一緒に活動しています。また、五日市や大竹と連携し、ビジネスチャンスを掴みたいです。
野原 方向性⑥、⑦、⑧、⑨についてどう思いますか。
細川 バラバラの項目ではPRできないと思います。集合体としてPRしていくことです。例えば、廿日市をクリーニングの町として単独のものでの盛り上げは難しいですが、美容の町として「廿日市に来るときれいになる」とPRすると訴求力があります。皆さん、現状の仕事に捕われているので、考え方や発想を変えていくことです。
野原 行政からの視点はどうでしょうか。
永田 産業振興の横断的戦略として七つの戦略(①②循環させる、③呼び込む、④打って出る、⑤⑥産業インフラの整備、⑦多様な働き方)を出しています。
 戦略①~④は市がまとめています。①は食、特にフードバレーの構築です。②は森林について。③は宮島を中心とした観光です。佐伯、吉和も含みます。④は廿日市市外、特に東京への販路開拓です。
 それらが相互に関連していきます。⑤、⑥はハードについ、⑦は人材についてです。今年度①~④を実施します。
 廿日市しごと共創センターを今年春に作りました。エリアを越えて人材を確保し活用していきます。
野原 今後、経済団体としてどのような取り組みが必要ですか。
細川 条例を実行していく会議体が必要です。トライアスロン、けん玉オリンピック、カキ祭りと皆さんの協力があったからできたことです。アイディアを一歩踏み込んで実行することです。
 そのためには、皆さんの意見の枝葉末節に目を向けて行くことだと思います。

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