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県政策委員会 海士町訪問 「ないものはない~離島からの挑戦」 ~最後尾から最先端へ

 政策委員会(佐藤清子委員長)は、7月11日~12日、島根県の隠岐列島は海士町を11人で訪ねました。海士町を経営フォーラムの分科会で取り上げることになり、「それでは自分たちの目でしっかり確かめ、内容を豊かにしよう」ということになったのです。当日は海士町の交流促進課の藤田まゆみ係長の案内で島内を視察、お話を聞きました。

【島が消える!?】

 中ノ島の海士町は1島1町の小さな島です。1950年ごろには約7千人いた人口が2010年には2374人に激減、超過疎化、超少子化の道を歩んでいます。国の公共事業で社会資本は整備されますが、15年前に町の借金は百億円を越え、財政再建団体への転落も予想されました。「このままでは町は消滅する」との危機感から、町民は02年、現在の山内道雄町長を選びました。

【自立へ覚悟の選択】

 翌年、平成の大合併を受け入れず、単独町制を決断しました。「自分たちの島は自ら守り、島の未来は自ら築く」という住民や職員の地域への誇りと気概が、自立への道を選択させたそうです。山内町長は「役場は住民総合サービス株式会社で、地域経営は企業経営で同じである」と職員の意識改革を始めます。
 そして、生き残りをかけた守りの戦略(短期作戦)と生き残るための攻めの戦略(中・長期の作戦)に分けて、実行に移します。

【守りの短期作戦とは】

 「守り」とは徹底した行財政改革の断行のこと。町長は「自ら身を削らない改革は支持されない」との信念から50%の給与カットを宣言します。
 現在、地産地商課長を務める大江和彦氏は「これまでの問題は前町長や自分たち職員の責任。町長ひとりの責任にするわけにはいかない。自分たちもカットをと申し出た。先憂後楽の考え方でもあった」と言います。
 こうして職員や議員の給与カット(今はほぼもとにもどす)や人員の削減、公共事業費の圧縮などを実行、町の借金も85億円近くまで減りました。給与カット分を子育ての財源に活用し、町民と危機感を共有することで、老人クラブからは補助金の返上、各種委員からは日当の減額の申し出、住民からは自分たちに出来ることはないかなどの声が上がるようになり、不平・不満の声は聞かれなくなったとのことです。

【攻めの中・長期作戦とは】

 「攻め」とは地域の資源を活かし、第1次産業の再生で島に産業を創り、島に人(雇用)を増やし、外貨を獲得して、島を活性化すること。役場の内部局員を減らし、攻めの実行部隊として、観光と定住対策を担う「交流促進課」、第1次産業の振興をはかる「地産地商課」、新たな産業の創出を考える「産業創出課」の3課を設置したそうです。
 そして、地域再生戦略として、「島まるごとブランド化」を推進、東京で認められればブランドになるということで、ターゲットは東京においたそうです。
 ①島じゃ常識!さざえカレーの発売、②隠岐海士のいわがき・春香の生産と出荷、③CAS冷凍システムの活用、④隠岐牛の生産と売り出し、⑤海士の塩の精製など、次々にブランド製品を立ち上げてきました。これらが、外貨を稼ぐと同時に雇用増につながっています。
 こうしたことで、384所帯566名のIターン(出身地とは別の土地に住む)が定住しています。なんと、人口の2割以上が移住者です。移住者の多くは、高学歴でキャリアを持ちあわせているのが特徴的で、まさに島おこしの原動力になっています。

【高校魅力化プロジェクト】

 高校が廃校になるとますます人口減少に拍車がかかります。海士町の島前高校では10年間の入学者数が77人から28人に激減し、統廃合の危機が迫っていました。高校の存続は島の存続に直結するということで、「『行きたい、行って良かった、行かせたい』といわれるような全国からも生徒が集まる魅力的な高校づくりに取り組んでいる」と、まち・ひと・しごと創生戦略プロジェクトの事務局長、濱中香理氏は言います。
 地域づくりのリーダーを育てる「地域創造コース」と難関大学にも進学できる「特別進学コース」をつくり、島外から意欲の高い生徒を募集する「島留学」制度を設け、海外からの留学生も積極的に引き受けています。また、公営塾「学習センター」を創設し、高校との連携により、一人ひとりの能力を引き出す教育を行っています。
 こうしたことで、生徒数は89人から180人へ、島留学は2倍以上の倍率になり、国公立の入学者もぐんと増えたそうです。島留学は、島外の多様性な人材が入ることで、島内の生徒にいい影響を与えています。

【理念型経営~最後尾から最先端へ】

 海士町の職員は57名。いわば中小企業です。理念型経営をどう推し進めるのか、そういう観点でも勉強になりました。山内町長は大きな方向性を示し、職員が仕事をすすめやすいよう「議会への説明を一手に引き受け、追求から職員を守った。具体策には口を挟まず、施策は職員がどんどん提案して、実行にうつしていった」(大江課長)そうです。数人の職員の方しか話せませんでしたが、やらされ感がなく、一人ひとりがわが事として仕事をすすめており、「自主」の精神がみなぎっていることを肌で感じることができました。
 超少子高齢化や財政危機など、海士町には地方が抱える問題が凝縮されていますが、それは日本が直面する問題でもあるわけで、「海士町は先取りして日本の未来を切り開く=最後尾から最先端へ」との気概はとても気高く感じました。
 「ないものはない」は海士町の生き方を発信するロゴマークですが、「便利なものはなくてよい。生きるために大切なものはすべてここにある」という意味に多くの参加者が共感、経営理念に加えたいとの声も聞かれました。

【お知らせです】

 10月6日の経営フォーラムで大阪経済大学の梅村仁先生が、第6分科会「地域に内在する企業家精神と自治体産業政策」というテーマで、海士町の事例を報告します。
 また、12月8日に松江市で行われる全国共同求人交流会で海士町の山内町長が講演されますので、よろしければご参加ください。お申し込みは事務局へお願いします。

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