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2025.01.23

女性部会 50周年記念行事 記念講演「見せる経営とインナーブランディングによる組織風土の改革」

開催日時:
2024/11/07(木)
会場:
リーガロイヤルホテル広島
人数:
367名
報告者:
講師:石坂産業(株) 専務取締役 石坂 知子 氏
文責者:
事務局 中野

講師:石坂産業(株) 専務取締役 石坂 知子 氏

石坂産業㈱は埼玉県で産業廃棄物の中間処理を行う会社です。我社を一言で表すと「循環をデザインする会社」です。1967年に東京で土砂処理業の会社としてスタートしました。ある日、まだ使える資源が海に捨てられる状況を目の当たりにした創業者である叔父が、「ゴミをゴミにしない社会をつくりたい」と思い現住所に会社を移し、リサイクル工場を建設しました。

■地域と自然の共生をめざして

1997年には、先駆けてダイオキシン恒久対策炉にリニューアルを行いました。しかし、その2年後の1999年に、テレビ番組の誤報をきっかけとした、所沢ダイオキシン問題が発生します。風評被害で地域の方から大バッシングを受け、廃業を覚悟しました。ただ、「ごみを出しているのは誰なんだ」と、反発したい気持ちがありました。ですが、自分たちの仕事を見直した時、法令は遵守しているが、屋外の作業で騒音・粉塵等の問題があり、地域と自然の共生ができていないことに気づきました。そこで、地域から必要とされる、愛される業種に生まれ変わろうと決心しました。

■廃棄物処理に革新を

行政の方の指導の下、焼却炉を廃炉し、新たに減量化プラントを建設。すべてのプラントを建物の中に覆った、全天候型独立総合プラントを建設しました。これにより、過酷だった露天作業を屋内で行うことができ、作業環境が良くなりました。また、環境事業として地域から必要とされる事業に変わることができたと思いました。それでも、ネットでは「隠れて悪いことをしているに違いない」と言われていました。

本当にショックでどうすべきか悩みました。ですが、いっそのこと全て見せようと思い、新たに見学者用の通路を建設しました。我社の仕事は、「誰もがやりたがらない仕事だが、誰かがやらなくてはならない仕事」です。仕事を見てもらうことに意味があると思い、続けていました。初年度200人だった見学者は、今では年間6万人を超えるようになりました。
見学された方からいただいたお褒めの言葉は社員に共有しています。すると、社員も見られていることで、誇りを持って働いてくれるようになりました。

■ビジョン実現のために

我社のビジョンは「ZERO WASTE DESIGN」です。再生可能な設計・ものづくりをする社会をめざし、あらゆるごみを資源として循環させ、「ごみ」という概念そのものをなくしたいと考えています。
採用をビジョンの共感を軸にしたサイクルにすることで、新卒や海外からの応募が増えました。
また、これまでトップダウンの経営でしたが、社員の声を聞き、仕組みに取り入れ、制度を変えることで、社員が能動的に動いてくれるようになりました。社員にプロジェクトを任せ、斬新なアイデアや考え方を会社がフォローして進めていくことで、社員はますます力をつけてくれます。ボトムアップがビジョンの実現には不可欠です。

■地域に必要とされる会社になる

私たちが1番大切にしていることは地域との共生です。社員に挨拶や3Sなど凡事徹底をすることはもちろん、業界のイメージを変えるために、顧客に対してもマナー順守を依頼しています。
 また、会社周辺の里山は不法投棄の温床と化していたため、社員がボランティアでごみを回収し、里山の再生を行う活動を始めました。20年活動を続け、今までに回収したごみの量は、スカイツリーの高さを超えるまでになりました。

■「ごみ」という概念のない世の中へ

SDGsという言葉がない時代から、地域の困りごとを自社の事業に結び付けて活動してきた結果、SDGsの項目にも該当するようになりました。
 12番目の項目に「つくる責任 つかう責任」があります。石坂産業では「すてる責任」もあると考えています。作る時から捨てる時のことを考え、ごみにならない素材を使うことで、すべての資源を再資源化することができます。輸入に頼らなくても資源が手に入る。そんな世の中にしたいと思っています。