「社会的な困難を抱える若者~発達障害を疑う社員の生きづらさへの理解と対応~」広島エリア地域共生委員会
- 開催日時:
- 2024/11/12(火)
- 会場:
- ひと・まちプラザ
- 人数:
- 61名
- 報告者:
- 講師:福山市立大学 教育学部児童教育学科 准教授 平野 晋吾 氏
- 文責者:
- 事務局 大塚
講師 福山市立大学 教育学部児童教育学科 准教授 平野 晋吾 氏
■発達に障害があるとは
発達障害とは、脳機能の発達に関連した障害のことです。発達障害は、「教えても教えても身についていかない」「発達しない人々である」という認識は大きな間違いです。知的な成長が遅いのではなく、発達の凹凸が他の人と異なるのです。
知的障害の典型的な発達モデルは、学習内容の習得がゆっくりであることが特徴です。一方、自閉症などの発達モデルは、学習内容が身につく順序や速さが変則的で個性的になるため発達の進み方を予測することは、非常に難しいです。特性によっては、ほかの人の半分の時間で習得できる内容もあれば、一般的な学び方では倍以上の時間がかかってしまうこともあります。人はある特性が優れていると、他の全ての特性も優れていると誤解しがちです。彼らが持っている特性を把握して、教育や福祉と連携しながら社会との適応をサポートすることが求められています。

■発達の多面性

人々が社会に出て働くには、多くの発達が関わっています。具体的には、社会性・対人関係、注意機能、読み書きなどの知的機能など、様々な発達機能を連携させながら働いています。しかし発達に関する誤解が2つあります。1つ目は、全ての能力は同じように伸びていくという誤解です。同じように伸びてほしいと願うことも多いですが、均等に成長するわけではないのです。
2つ目は、ある発達が分かると他の部分も予想ができると誤解することです。一部の能力は低い場合でも、他の分野では非常に高い能力を発揮することさえあります。
例えばある中学生は、何度読んでも読むことができず読むことを諦めていました。しかし自分の特性に合った方法で学習することで、成績が大きく伸びて学力の高い大学に進学した例があります。この学生のように特別支援学級を勧められていたとしても、学習方法を変えることで驚くほどの成長を遂げる場合があります。
このように発達障害を持つ人にとっては、「適材適所」が非常に重要になります。凹凸の違いが大きいほど周囲との違いに戸惑い、困難を感じやすく周りも理解が難しい状況に陥るのです。そのためどのような場所で働き、どのような仕事を任せるのかを慎重に検討することが大切です。
■長い時間をかけて理解すること

彼らの特性や文化を理解することは、長い時間がかかります。無理に変えることはかえって逆効果です。また発達は、長期間の経験によって形成されているため、現時点だけを見ても判断することはできません。長期的な視点で理解する必要があります。
特性や文化を捉えるときに重要なことは、弱みともしっかり、そして穏やかに向き合うことです。強みや良いところだけを注目してしまいがちですがいずれ歪みが出ます。できないことを見つけたら、多くの強みを見つけるようにしています。強みと弱みの両方を理解して、一緒に個性を生かす方略について考える時間を設け、自己理解を促すことで、彼らが持つ本来の能力を最大限に引き出すことができるのです。