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オーストリア環境視察報告 百年の計を語れる人材を育てる  永本建設株式会社 代表取締役  永本清三

 はじめに

 広島同友会のエネルギーシフトの勉強会にお越しいただいた名城大学経済学部の井内尚樹教授(産業経済学者 地域経済活性化が専門)がフランスに留学され、滞在中の三月の初めにオーストリアで省エネルギー技術見本市があるので、案内するから視察においでという優しいお誘いからはじまったツアーです。広島同友会から九名、井内教授の地元愛知から一一名という同友会の会員異業種の経営者が集まった一〇日間の視察でした。
 ハンガリーのブダペストから目的地のオーストリアには列車移動。ウィーンまでの車窓から数えきれないほどの風車が立ち並んでいました。ブルゲラント州は電力の80%を風力でまかなっています。電力を風力でまかなう目標で建設を進めているそうですが、アルプスから吹き降ろしている風は年間安定して吹くそうです!
 
 
 木材チップ液化ガス発電+熱利用 URBAS社


 
 ウィーンから南へ二時間車を走らせ、木材チップを利用した地域エネルギー基地を視察しました。
 オーストリアでは電力供給の再生可能エネルギー60~65%が水力で、バイオマスはわずか5%の発電だけです。バイオマスは発電だけでは25%しか熱量を使いこなせませんが、給湯などの熱に変えれば熱量の95%まで有効に使えます。だから、まずお湯に変えて地域の暖房や給湯に使っています。
 再生可能エネルギーをやみくもに使うことに補助金が出るのではありません。各家をつなぐ配管などのインフラ整備にお金を出すことで、地域の土木屋・設備屋の仕事を確保することになっています。
 その中で熱供給をしながら発電する最新の技術を視察しました。チップをガス化炉に入れ発電する最新鋭のチップボイラーシステム。この施設があれば、化石燃料が止まっても稼働することができますので、地域の安心が保障されます。
 
 
 バイオマスボイラー KWB社


 
 バイオマスボイラーは、オーストリア製品の性能が良いというのは日本でも有名ですが、中でもKWB社、FROLING社などが有名です。四つの州単位の仕事の範囲が決まっているようで、地域でバッティングすることはないようですが、多くの製造工場が中小企業であり、先進的に進めたことで飽和状態になり、国内の売り上げが下がっています。
 そこで、近年は国外への輸出が盛んになり、それができる企業が生き残るということで、KWB社は日本語版のカタログも作っていました。このように、森林資源が豊富な海外への販路拡大が今後の課題で、今年の六月にはオーストリア大使館が主催する林業機械、環境産業の展示会が長野であり、KWB社の通訳のモニカさんも来日されるようです。
 たんに薪を燃やし熱に変えるだけでなく、お湯に熱交換するシステムがメーカーの売りとなっているようです。薪、チップ、ペレットそれぞれのボイラーが全て熱交換によるボイラーシステムとなっています。田舎では薪、街中ではペレット、集約施設ではチップとなっているようで、隣国ドイツへの出荷は七割がペレットボイラーです。


 
 KWB社では、すでに日本に導入している実績を持っており、熱交換として大量に使われている温泉施設になっています。
 ペレットボイラーを有効に使うために、焼却炉の底板がキャタピラーのような金物で移動し、連続的に熱を燃やし、灰を外に出すなど、まだ見たことのない機械は、これからに日本に導入されるのでしょう。
 
 
 大型ペレット工場 HASSLACHER NO RICA TIMBER 社

 大きな製材所の一角がペレット工場になっていました。全社合わせて一三〇〇人の製材所ですから、どんなに大きいか想像できると思います。見渡す限りの貯木場に完成品の山々。毎日出る製材屑の量も半端ではないはずで、その鋸屑から作るホワイトペレットがヨーロッパ各地にタンクローリー車で輸送されています。
 製材所で使う電力も自家発電で補うところが多く、おが屑発電や近所の小川から小水力発電を工場内で使うのがスタンダード。小水力発電は一日中発電ができるので、夜中に乾燥施設やペレット工場を全自動で動かすというのだから素晴らしい。


 
 ペレットのコストはこれ以上下がることはないというほどの製造工程を圧縮しており、このコストならば石油の代替エネルギーの一つとして使えます。現地のホームセンターでは一五キロ入りのペレットが日本の1/3以下の値段四五〇円で販売されていました。
 
 
 CLT工法の五階建てアパート視察 ~建築業界では今話題のCLT


 
 日本の林業、建築で話題になっているのがCLT(Cross Lamionated Timber)ですが、木材需要拡大を期待して製造工場が完成し、実験棟もできていました。ヨーロッパではコンクリートに代わる建物として、地域の雇用の創出になると言われていましたが、日本では耐震性や高温多湿の環境でCLTの性能がどこまで担保されるか、まだまだ時間のかかる取り組みだと思います。
 二年でかなり劣化している部分など気になることもあり、人口減少を迎える日本では、わざわざコストのかかる施工に行くのか、疑問も感じました。
 
 
 環境先進国オーストリア視察 まとめ ~百年の計を語れる人材を育てること
 
 今回の視察で感じたのは地域の企業の雇用を第一に考えるオーストリアに対し、日本ではどうしても生産性を重視し、大手企業優先の政策になっているように思ったことです。エネルギーでもそうですが、常に地域での自給率を高めることに目標を持っているオーストリアの考え方はどこからきているのでしょうか。それは、一九七二年に工事着手、七三年のオイルショックで機運が高まったツヴァンテンドルフ原発を、七八年に国民投票で憲法改正までして稼働させなかったことにあります。そして、八六年チェルノブイリの原発事故より、加速して再生可能エネルギーに取り組みました。
 その当時の首相は責任を取り退陣しますが、英断を下したと国民から高く評価され、再選されることになります。そんな国民性は今なお残っています。再生可能なエネルギーが増えればローカルな資源が使え、雇用の創出になることを実践で体得したのでしょう。
 そして、ちょうど視察旅行に行く時のニュースが2017年ウィーン国際空港拡張差し止めを連邦裁判所が判断したことで、経済性よりもCO2の排出量増加につながり気候変動対策に逆行するとして建設停止を命ずる判決を出しました。公共インフラを止める判決は世界でも初めてで、今後も世界で注目を浴びることになるでしょう。オーストリアの市民は目先の事より、将来を展望した判断ができると思います。

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