同友ひろしま/2019年/12月/News

第6分科会 障害者雇用 「障害者雇用から見えてくる企業づく ~知ることから始まった~」

報告者 ㈲エス・ケイ・フーズ 取締役  中村こずえ 氏 (長崎)

「だって障害者だもん…」から一転

 私は現在、長崎でマクドナルドのお店を11店舗経営しています。正社員は20名、アルバイトが430名ほどの会社です。夫が経営を始めた当初、私は朝六時から夜の7時まで店舗に出た後に、経理の学校に通い、その後また会社に戻る生活を繰り返していました。
 地域貢献活動の一つとして、地元のイベントでポテトの無料券も配りましたが、私はお金を配っているような気がして、ずっと違和感を抱いていました。
 ある日、他社が運営しているマクドナルドの店舗で障害者を雇用することになり、実際に見に行きました。彼は厨房の掃除や洗い物、ゴミ出しなどバックヤードの仕事をしていました。1目で障害があるとわかる彼を見て、私は「それくらいしか仕事がないよね。だって障害者だもん…」と思っていました。
 それから6年後、私はまだ無料券を配りながら、地域のために何かできないかモヤモヤしていました。ちょうどその頃、長崎市内の全てのマクドナルドの運営を自社で行うことが決まり、他店の社員も自社で雇用を引き継ぐことになりました。その中には、あの障害を持った彼も含まれていました。
 きっと彼は辞めているだろうと思いながら、その店舗に行くと、彼は一人でハンバーガーのお肉を焼き、ポテトを揚げているのです。掃除とゴミ出しくらいしかできないと思っていた私は、とても反省しました。同時に彼の努力と、六年かけて彼を育てた周りのスタッフに感動しました。
 当時の私は社員にいかにお客様に失礼のないように接するか教えていました。しかし、私がしていたのは教え育てる「教育」で、本当に必要なのは共に育つ社風だと彼らを見て気づきました。性別や障害に関係なく、すべての人を育てることが私の責任だと痛感しました。

会社の戦力になれる!

 猛反省した私は早速、地元の特別支援学校やハローワーク、労働局に電話をして障害者雇用について教えてもらいました。
 現在では、12名の障害を持った社員が働いています。そのうちの1人の女性社員は、マネージャーとして働いています。マクドナルドのマネージャーは簡単になれるものではありません。きちんと研修を受け、マクドナルドの本社から認定を受けて、初めてマネージャーになれるのです。
 障害者雇用の話をすると、よく「こずえさんだからできる」「うちの会社は〇〇だから、雇用はできない」と言われます。わからない、面倒くさそう、即戦力の社員に給料を払うほうがいい、コミュニケーションが取れなさそう、突然大声をあげそう…。障害者雇用ができない理由が出てきます。その気持ちはよくわかります。私も最初は同じことを思っていました。人はつい、できない理由を探してしまうのです。
 企業が仕事の切り出しをすれば、障害者雇用は可能です。病院では清掃や制服の洗濯の仕事を、飲食店では野菜の皮むきや料理の下ごしらえをしています。1時間や2時間の勤務時間でもいいのです。彼らは仕事をしたいのです。みんなと同じように、誰かの役に立ちたいと思っているのです。経営者として、仕事を探すのが責任ではないでしょうか。

一緒に作るから大丈夫

 一般的に3日間あれば、全種類のハンバーガーを作れるようになります。しかし、障害を持った人の場合は、1カ月以上かかります。でも、たとえ作り方を覚えるのに1年かかったとしても、20歳の社員が定年までの40年間勤めることができれば、残りの39年は会社の戦力として働けるのです。彼らの能力を引き出し、長く働けるようにすることが経営者の責任だと思っています。
 ある日「Y君が大声を出して暴れている」と電話がかかってきました。Y君は自閉症で、入社半年が経っていました。状況を詳しく聞くと、お客様が100個のハンバーガーを注文されたのです。普段は2個や3個の注文が、突然モニターに100個と表示されたのを見て、彼は大変な数を作らないといけない!とパニックになりました。そこで彼を別室でしばらく休憩させておくことにしました。時間をおいて、電話をすると彼は30分すると落ち着いたと言います。そこで、再び厨房で仕事をしてもらうことにしました。
 またしばらくして、「今日もY君が大声をあげています!」と電話がかかってきました。同じように大量注文が入ったことがきっかけです。また別室で休憩させると、今回は20分で落ち着きました。
 2度あることは3度あります。今回はたまたま私がその場に居合わせました。今度も100個の注文です。注文を受けた社員はレジにそのまま数を打ち込むと厨房のモニターに数が出るので、数が表示されない別のレジで会計するよう、マネージャーにお願いをしました。
 マネージャーは彼に「Y君、今からいっぱいハンバーガーを作るよ。でもね、みんなで一緒に作るから大丈夫よ!いっしょにがんばろうね」と声をかけました。この甲斐あって、彼は大声をあげることなく、ハンバーガーを作り上げました。これがすべての人を育てる、共に育つことだと気づかされました。

できることに目を向ける

 この環境は決して私1人が言って出来たものではありません。社員が一緒にY君と育っているのです。Y君を採用して、まわりの社員がよく考えるようになりました。改めて共に育つことは、すごいなと思えた出来事でした。
 知的障害の人は能力が高くないかもしれませんが、自社の障害を持った社員は、元気のいい挨拶も、目標に向かおうと努力することもできます。私は背が低いので、高い場所にあるものが取れません。でも背の高い人が取ってくれたら済みます。これって障害でしょうか。できないことに目を向けるより、目標に向かって取り組む方が大切だと思うのです。
 Y君が働く様子を動画で見ていただきます。マクドナルドでは、同時に2つの商品まで作る事ができます。この時のY君は、他の社員と協力しながら作っていますが、もし、まわりが忙しければ、自分1人で商品を作ります。ハンバーガーは商品によって、パンの調理の仕方も異なるのですが、それも見分けています。よく見ると誰も彼に指示していませんし、彼もしゃべっていません。しゃべっていないから、コミュニケーションが取れないわけではないのです。

社会から愛される子に…

 2008年に特別支援学校のPTA総会で講演をしました。私は「残念だけど親は子どもより先に死んでしまいます。だから、皆さんは子どもたちを社会で愛されるように育ててほしい。皆さんの子どもが社会に出たら、企業は責任を持って育てます」と話しました。
 講演後にお母さんたちと話をすると、障害を持つ我が子が不憫でつい何でもしてしまう。でも、そうじゃないんですよね、と返ってきました。この時のお母さんたちの思いが、今でも私の背中を押し、一人でも多くの障害を持った子を就職させたいと思うようになりました。
 その後、長崎の佐世保支部で中小企業障害者雇用支援フォーラムに誘われ、そこで比嘉さん(現中同協障害者問題委員長)に出逢いました。まだ、同友会に入る前のことでした。比嘉さんから「長崎にはまだ障害者問題委員会がないから、あなたが作りなさい」と言われ、長崎同友会に入会しました。それが8年前です。入会後、障害者問題委員会を立ち上げ、続いて女性委員会の設立も頼まれました。現在はダイバーシティ委員会として、活動を行っています。  同友会は障害者問題に取り組む唯一の中小企業団体です。人を生かす経営、人間尊重の経営、共に育つ、という同友会の考えがあります。この言葉の頭に「すべての人を」をつけて考えてください。
 「よく頑張っているね」「ありがとう」「あなたのおかげ」…。どれも言われてうれしい言葉です。これが障害者だからという理由で、言われる機会を失っていいのでしょうか。私は経営者がその機会を閉ざすことがあってはいけないと思います。私のお話しで、少しでも障害者雇用を考えるきっかけになればうれしく思います。

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