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第9分科会「金融行政の大きな変化に学ぶ ~『もう貸せない』から、どうしたら『もっと貸せる』関係をつくれるか」

2016-12 (32)報告者 中国財務局 理財部 金融監督第一課長  田中 賢輔 氏

 中国財務局は、財務省の地方の出先機関であり、金融庁からも委任を受けて、金融機関の監督や検査も行っている役所です。私は金融監督第一課で、中国地方の地域銀行の監督を担当しております。金融庁に勤務していた十六年前は、証券会社の検査・監督を行っており、そのころは金融処分庁とも揶揄されるくらい、健全性に重きをおいていた時期でもありました。健全性に重きをおいた行政は一定の効果を生んだということから、金融機関は今まで以上に、顧客(企業)の方に向いた関係を重視することに焦点をあてた行政が大切であろうと認識しています。
 そうしたことから、金融庁は昨年、企業の皆さまにヒアリングやアンケート調査を全国的な規模で実施しました。今日は、そのヒアリングの結果や先月公表された金融仲介機能のベンチマークなどをお話してまいります。

金融機関のコンサルティング機能に期待

 企業がメインバンクを選定している理由は、「自社や事業に対する理解」が最も多く、「融資の金利」の約三倍で、重要なメッセージととらえています。その他、「長年の付き合い」や「支店が近くにあるから」といった回答が多く見られました。
 「経営上の課題や悩みについて、メインバンクとどの程度、相談していますか」という問いにヒアリングで28%、アンケートでは45%の企業が「全く相談したことがない」と答えています。全くないというのは重たい言葉だと受け止めていまして、なぜ相談しないのか、その理由で一番多いのは「あまりいいアドバイスや情報が期待できないから」でした。これは企業の皆さまにとっても不幸なことだと思います。金融機関にとってもメインバンクに相談できていないマーケットがあるということであり、ここに入っていければ何らかの効果が出てくると考えられます。
 小規模企業の皆さんは、「他に相談相手がいるから(相談しない)」という方も多く、同友会のような会の役割が大きくなっています。また、破たん懸念先について調査したところ「全く相談していない」割合が最も高いことが分かりました。
 また、「経営支援サービス」について、メインバンクと相談して支援を受けたことがある答えた企業の約八割が、「財務内容の改善」など何らかの効果があったとしており、金融機関のコンサルティングが役に立っていることがうかがわれます。もう少し踏み込んで、財務内容に特段問題のない正常先上位では、「売上の増加」や「事業分野の拡大」など、成長支援に効果があったと答え、財務内容に少し問題がある債務者区分下位では、「事業の継続」等の経営支援に役立ったと答えています。金融機関は多くの企業を知っているという強みがあると思います。見聞きした内容をアドバイスすることが喜ばれるわけで、このコンサルティングはやればやるほど中小企業の方々にとって恵みになると思います。

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借入は証書貸付が多くなっており、資金繰りが圧迫されるケースも

 企業の皆さんは運転資金を証書貸付で、長期の資金を借りておられるのが多いことがわかりました。また、債務者区分下位の方々ほど、証書貸付による資金調達の比率が高い傾向にあるようです。
 信用保証協会の利用ですが、七割が「金融機関に勧められたから利用している」と答えています。また、信用保証協会の保証を受けたことのある企業の約七割が、協会と「直接接触したことがない」と答え、対応が金融機関に委ねられていることがわかりました。
 こういう状況から、金融機関は、短期の融資から制度融資などを使った長期の融資へ転換してきたことが見てとれます。短期から長期の融資に変わると、企業にとっては約定弁済が発生し、財務内容によっては資金繰りが圧迫され、条件変更が必要になってくる場合もでてきます。
 加えて、短期から長期の約定弁済になると、手形貸付のように定期的な書き換えがなくなって、金融機関との面談など接触が減り、企業の課題解決が先送りになる懸念も増えるのではないかと思います。
 また、企業が「提供してほしい情報」と金融機関から実際に「提供を受けている情報」との間には、ギャップがあることもわかりました。企業は、「業界や取引先の動向」、「公的支援策に関する情報」など、自社の事業に直結する情報を求めていますが、金融機関は「経済・金融・国際情勢」など、一般的な情報や金融商品の情報などを提供しています。このギャップは金融機関にとってチャンスとなり得ると思います。ギャップを埋めればいいわけで、企業の皆さんの求めることに応え、業績改善に貢献していける可能性があります。

企業から評価される金融機関の取り組み

 さて、これまでの金融行政は、主に金融機関の健全性にフォーカスをあてていました。現在は、リレバンや金融円滑化など、企業への支援に金融機関がどう頑張っているかにフォーカスを変更しており、ベンチマークに重なる部分でもあります。ただし、「銀行の健全性の確保」は引き続き金融行政の中核的な目標でもありますので、なくなるとか、やらないのではないことを指摘しておきたいと思います。
 先ほどお話したヒアリング・アンケート調査から、企業から評価される金融機関の取り組みには共通する三つの特徴のあることがわかりました。
 ①顧客のニーズや経営課題の把握において、独自の仕組みを構築していること。つまり、行員が企業に行く際、ヒアリングをするための一定のフォーマットなどをつくっていることなどです。
 ②事業性評価を顧客に開示するなど、顧客との課題共有のための対話を実施していること。つまり、フォーマットで聞いてきた課題などを色々な資料を提示しながらフィードバックして、対話をしているというものです。
 ③顧客への支援を、営業店任せではなく、本部が積極的に関与・サポートしていること。つまり、営業店の業務に関し、本部が全面的にバックアップしているということです。

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金融仲介機能のベンチマークとは

 金融庁は九月、金融仲介機能のベンチマークを公表しました。多くの金融機関は、それぞれの経営理念や事業戦略等などで、金融仲介機能を発揮して、取引先企業のニーズや課題に応じた融資や解決策の提供などを行うことで、取引先企業の成長や地域経済の活性化などに貢献していく方針を掲げています。
 しかしながら、企業からは「金融機関は相変わらず担保・保証に依存し、対応は変わっていない」などの声が依然として聞かれます。また、先ほどご紹介したように、企業から評価される金融機関は、企業のニーズ・課題の把握、経営改善等の支援を組織的・継続的に実施することによって、自らの経営の安定にもつなげていることが確認されました。金融機関が、金融仲介の質をいっそう高めていくためには、金融機関自身が取り組みの進捗状況や課題などについて、客観的に自己評価して、見える化することが重要だということで、金融仲介機能のベンチマークを策定、公表したところです。
 ベンチマークの具体的項目は、すべての金融機関が活用可能な「共通ベンチマーク」と金融機関自身の戦略やビジネスモデルを踏まえて選択できる「選択ベンチマーク」を提示しています。また、よりふさわしい独自の指標を活用することを歓迎しています。
 このベンチマークを使って、企業の皆さんに、自分たちの役に立つ金融仲介の取り組みを、積極的・具体的に開示していただきたいと考えています。
 金融仲介の取り組みの正解は一つではなく、金融機関が自主的に創意工夫を発揮して、検討・実施していくべきものです。金融庁としては、各金融機関の取り組みをできるだけ具体的に把握して、いっそう各金融機関が仲介の質を高めていけるように、効果的な対話を行っていきたいと考えています。
 以上、金融庁の行ったヒアリング・アンケート調査の概要や金融仲介機能のベンチマークを紹介しました。なお、八月に行われた金融庁の有識者会議では、金融庁の新しい検査・監督の方向性が検討されています。そこでは、目指すべき金融の姿として、「顧客との『共通価値の創造』に根ざしたビジネスモデルの確立」を掲げ、検査・監督見直しとして、①形式→実質、②過去→将来、③部分→全体、の三つが提起されていることをご紹介しておきます。

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