同友ひろしま/2023年/1月/News

「激変の内外情勢をどうとらえるか ~中小企業振興(憲章)の立場から考える~」総会議案検討に向けた「情勢学習会」

講師:京都橘大学経済学部 准教授  小山 大介 氏

12月に開催された県理事会では、次年度の総会議案書作成に向けた情勢学習会を開催しました。今回、講演の概要(抜粋)をご紹介します。

■なぜ情勢分析を行うのか、羅針盤なき経営の危険性

現状、世界情勢は大きな変化を迎えています。世界平和は大きく脅かされており、中小企業の経営環境は大きく揺らいでいます。このような状況下で、国内外経済へ羅針盤を持たずして航海に出ることは大変危険です。航路図を描き、自社の船の位置を確認する必要があります。それから外部経済環境がなぜ発生しているのか、深く問い詰めなければなりません。「大変だ大変だ」と焦るだけでは、対策を立てることができません。これらの理由から情勢分析が必要となります。
30年前までは、「外部環境のことを知りたければ、アメリカのことを分析したらいい」と言われていました。しかし現在は複数の課題が世界で同時多面的に発生しています。1つ1つ分析し、対策(戦略)を構築しなければなりません。
中小企業憲章には「中小企業は日本経済の主役」とありますが、充分に力を発揮できない環境にあります。平和が脅かされる時代が到来しています。
経済や社会情勢を読み解き、経営に生かし、事業を継続していきましょう。

■世界情勢が経営基盤を直撃する~地域経済・中小企業のグローバル化

中小企業を取り巻く外部環境の変化は複雑化しており、先行きの見通しが立たない状況が続いています。
現在ウイグル人権問題や再生可能エネルギーなど様々な課題があります。調達面においても厳しく見られる時代となりました。サプライチェーンの末端まで見なければなりません。これらによりどんな中小企業もグローバル化の影響を受けています。
2023年はコロナの影響により中国の生産が立ち直るまで在庫難の影響があると予想されます。海外と取引がない会社でも間接的に影響を受けると考えられます。小売業や飲食、宿泊業でも影響はあります。2022年は日本の貿易収支が過去最大の赤字になりました。これは国内から資金が逃避していることを意味します。日本経済は6割が個人消費で支えられているため、購買力が失われている状態です。
だからこそ社会情勢を知り、経営に生かし、厳しい時代に事業継続させることが課題です。

■景気の「潮目」を読み解く

景況分析の結果より、バブル崩壊以降中小企業の景況は伸び悩んでいると言えます。現在景気は「よくはない」状態であり、先行きが不透明です。下図の通り2006年以降「景況の谷」が3つ存在していることが分かります。①2007年~2009年リーマンショック、②2011年東日本大震災、③2020年~2021年の新型コロナウイルス感染拡大です。更に、世界経済の不安定化、平和への脅威、ウクライナ戦争、米中対立などがあり、2023年はより一層、景気が悪化すると思われます。景気の山は2017年下期でした。通常、10年周期で景気の山谷がありますので、景気は後退局面となっていましたが(コロナ禍以前から後退局面あった)、2019年10月の消費税増税が決定的となり、その後新型コロナウイルスの感染拡大で不況に陥りました。

■経営上の課題は、「付加価値」と「資金繰り」

景況調査(中同協DOR)を見ると、2010年代からの課題である「人材不足」に、近年は「仕入単価の上昇」が加わりました。次期経営上の重点として、下図の通り「付加価値増大」と「新規事業の展開」の回答が上位を占めています。付加価値をいかに継続的に高めていくかが、事業継続の大きな課題になります。付加価値を上げるためのヒントは、新規事業の展開にあります。
資金繰りについて、正規従業員数が20人以上の企業は比較的に安定しています。ですが4人以下の企業は落ち込みが非常に早く切迫感があります。
コロナ禍であっても、採算が改善している企業はいます。しかし悪化している企業が同じだけいます。悪化企業をどのようにサポートしていくかが課題となります。金融機関や市役所等にこのような状況を伝え、様々な支援の拡充を要請することが必要となると考えます。

■中小企業の付加価値で、地域経済を活性化する

金利は、今後上昇する可能性が高いです。企業は資金調達面がかなり厳しくなります。
今後金利や金融機関の動向にさらに注視する必要があります。
今後の課題について売上高DI(Diffusion Index)と採算DI の差を狭めることです。(売上高IDが上がっても、採算IDは低調に推移している)価格転嫁が充分に行われず利益が上がっていない状態が続くと、事業継続が困難になります。企業として収益を確保し、従業員の雇用と賃金を確保するためには付加価値がなくてはならない。地域内における付加価値の積み上げが地域経済の活性化を促します。

■国内外の政治経済情勢:増大する不確実性~少子化、気候変動・災害増加、食料問題他~

今後も不確実性が増すだろうと考えます。国内、世界、環境、(人権問題)についてしっかりと向き合わなければなりません。世界環境の変化が経営環境に大きく左右する時代になりました。多くの課題があり短期的に解決するものはありません。
国内では、少子化が問題となっています。2022年出生数は80万人を切ると言われています。日本国内の人口は急激に落ち込む可能性が高いです。
長期的視点では、気候変動・災害増加がさらに深刻化していくと考えられます。食糧問題と水の問題で平和が脅かされる可能性があります。
国外では、ウクライナとロシアの対立が問題です。短期的に解決する見通しが立たず平和が脅かされています。ロシアは石炭や肥料・鉄鋼・アルミニウムを、ウクライナはトウモロコシ・食製油・小麦を輸出しています。2023年度肥料価格高騰により大豆やトウモロコシなどの作物が不作となると考えられます。今後、小麦に代表される国際商品の調達が厳しくなるでしょう。
米中対立も深刻化しています。アメリカのトランプ政権下では、中国からの輸入品に25%の関税をかけています。高性能半導体の輸出制限を加えたことで、グローバルサプライ・チェーンの混乱が生じています。今後も不安定な状態が続くと予想されます。

■変わる「モノ」と変わらない「モノ」を見極める

これから非常に厳しい時代が訪れるでしょう。私たちは、時代の変化に合わせて「変わるモノと変わらないモノ」を見定めて行動することが大事です。中期的視点では、販売先の多様化や新規事業の展開。長期的視点では、外国産から国産の置き換えなど国を上げて取り組んでいかなければなりません。
中小企業の日々の経済活動が日本経済を支えています。最悪な事態を想定しつつ、楽観的に行動していきましょう。

記:事務局 大塚

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