「トップダウンから人的資本経営への転換劇 ～働く人が育ち、未来を創る経営とは～」福山支部　7月支部例会

我が社は広島市内中心部に焼き鳥屋を３店舗経営しています。社員数はパートを含め42名、今年で創業48年目を迎えます。ですが、私は焼き鳥屋を経営しているという感覚ではなく、『炭焼雷』を経営していると思っています。

■経営者になる

先代の父はトップダウンのカリスマ経営者で、社長がいなければ物事が決まらない会社でした。私は父の跡を継ぎ、専業主婦から社長になりました。継いだ当時、会社では様々な問題が起きていましたが、重大さをわかっていませんでした。そんな時、本社と店舗を火災で焼失しました。火事のあった日の夜、焼け跡に呆然と佇む社員がいました。不安そうな顔で私を見る彼らに「もう一度この地域で『炭焼雷』を再建したい」と想いを伝えました。すると社員は「はい」と答えてくれました。この時、私が経営者に変わった瞬間でした。

■経営を問い直す

■事業・社員・顧客と向き合いなおす

ところが、2020年4月にコロナ禍となり、売上は90％ダウン、単月で1,000万円の赤字の状態になりました。なによりお客さんが来ないお店に、それでも背筋を伸ばし、立ち続ける社員の背中を見ることが辛かったです。そこで、毎年作り続けてきた経営指針書を破り捨て、生き残るための7箇条を掲げました。また、倒産までのシミュレーションを行い、お店が閉まっていても1年は持つことがわかったため、この1年で新商品の開発に取り掛かりました。
それまでトップダウンの経営を行っていました。ですがトップダウンの経営ではこの難局は乗り越えられないと思いました。社員には「答えを示す」のではなく、「問いをなげかけ、考えてもらう」スタイルに変えました。そして、考えてもらうために情報を共有し、意思決定の段階を透明化しました。

■経営指針の全社的実践

2022年からは経営指針書の行動計画にある「組織の変革」のため、人的資本経営に取り組むことを重点目標としました。経営指針書の作成には社員と取り組み、行動計画の数値目標はAIを活用しています。
また、我が社では日報を核とした人材育成に取り組んでいます。社員は新しい取り組みをすることに抵抗があります。その抵抗をなくすために、私自身が日報を1番に書いています。理念が共有できていないことが悩みだったので、我が社の理念を毎日少しずつ簡単な言葉で書き、伝えています。私自身が1番に書くことで、誰も読まない日報から誰もが必ず確認をする日報になっています。

■働く人が育ち、未来を創る経営とは

我が社の働く人が育つ環境は、「問いを投げかけ、考えさせるマネジメント」「本音を言い合えるオフサイトミーティング」「正解よりも納得解を大切にする場づくり」「日報やAIを活用した見える化」です。
そして、未来を創る経営は「自ら仮説を立て、実行し、改善する科学性」「他者と協調し、聴き合い、巻き込む人間性」「地域・社会との接点を持ち、社会課題を経営で解決しようとする社会性」だと思います。
人的資本経営とはただ人を大事にすることではなく、人に投資をすることです。そして投資とは、社員への期待と信頼をセットにした育つことへのコミットメントだと思います。

〈会社概要〉（株）キャピタルコーポレーション
設立：1985年　資本金：2500万円
従業員数：42名（パート・アルバイト含む）
事業内容：炭焼雷の経営
会社URL：https://capital-co.net/