役員研修大学2025(STEP2) 第2講(10/24開催)労使見解の意義と自社での実践
- 開催日時:
- 2025/10/24(金)
- 会場:
- TKPガーデンシティ広島、Zoom
- 人数:
- 32名
- 報告者:
- 中小企業家同友会全国協議会 経営労働委員長 山田 茂 氏((株)山田製作所 代表取締役会長/大阪同友会 代表理事)
- 文責者:
- 事務局 長谷部
■汚い町工場が、毎年900名が見学に訪れる会社に

同友会との出合いは1999年の冬。売上95%ダウンという厳しい現実を目の前に、藁にも縋る思いで入会しました。経営指針セミナーで「労使見解」を学んで実践し続けた今、大きな変化を遂げることができました。
「人を生かす経営」の中で語られる労使見解とは、経営者としてのあるべき姿を問いかけ、労使関係の創造的発展こそ企業成長の原動力であることを示した、言わば経営のバイブルです。これを自分と会社のことを振り返りながら読み解いてみてください。
■言行一致の経営姿勢・経営指針
労使の信頼関係とは何でしょうか?私の入社時、社内コミュニケーションの不足を感じ、社員を説得して月一研修を提案しました。始めて4か月後、忙しいから今月はやめようと私は言いました。社員は口には出しませんでしたが「お前が始めたことだろ」という心中だったでしょう。そんな過去を思い返し、「嘘をつかない」「言ったことは必ずやる」と決心しました。
経営指針も同じです。先輩会員に「経営方針には外部と内部向けの2種類ある。内部のことは経営者が必死になれば達成できる」と言われました。初めて行動計画に掲げたのは読書感想文を書くことです。漢字も書けない職人たちが書く感想文に、私は同じ文量でコメントを添える。それを1年間やり遂げました。感想文は作業日報へと形を変え、今でも交換日記は続いています。
■社員を最も信頼できるパートナーとして“共に育つ”
労使見解には「経営者は企業の全機能をフルに発揮させて~」とあります。最初は工場の機械を休ませないことだと思いましたが、実はこれは社員のことだったと気づいた出来事があります。
頭は良いけど不器用な若手がいました。自社はすべてを一人でできる職人しか居場所がありません。専務(現社長)の弟は彼に加工指示書の作成と資材発注を任せようと提案しました。専務自ら昼休憩の時間を割いて、図面も見られない彼に毎日一から全て教えました。彼もそれに応えました。互いに大変だったと思います。そんな彼は今、凄腕の営業マンとして活躍しています。
これこそ企業の全機能の発揮であり、人間尊重の経営であり、共に育つということなんだと気づきました。経営者は社員の能力がフルに発揮できるよう全力で取り組まねばならないのです。

■労使の信頼関係が全社一丸の会社をつくる
2001年に社長になり、社員に①公私混同しない、②経理公開を誓いました。経営が悪化し給料10%カットさせてほしいと社員全員と面談したときのことです。退職も出るだろうと覚悟した私に社員たちは「俺達も頑張るから社長も頑張れ」「子供のいる社員に俺の分の給料回せ」と言ってくれました。その言葉に涙しました。嘘をつかない経営をしてきて本当に良かったと思った瞬間です。
2009年に過去最高利益を出しました。しかしリーマンショックで仕事はすべて無くなり、社員に決算賞与0を頼みました。社員は「私たちも1年間目標数字を追いかけてきました。その成果として1万円だけでも出してほしい」と直談判にきました。その言葉に労使の信頼関係を思い出し、自身を恥じました。
■共に学び共に育ちあう社風づくり
労使見解と経営指針の実践を続けてきて、うちは少しずつ理念に近づいているという実感があります。外部からも認められる、共育力ある会社をこれからもめざします。
経営理念
私達は、モノつくりを通じて社会に
貢献する文化型企業を創ります。
<会社概要>㈱山田製作所
創業:1959年4月
資本金:1,000万円
売上:2億8,000万円
従業員数:18名
事業内容:産業機械にかかわる部品製造及び省力化機器設計、製作
URL:https://www.yamada-ss.co.jp/