「なりたい姿になるために~あり方とやり方~」広島西支部オープン例会報告要旨
- 開催日時:
- 2025/02/28(金)
- 会場:
- 西区民文化センター
- 人数:
- 59名
- 報告者:
- (有)石井製本所 代表取締役 石井 龍彦 氏
- 文責者:
- 事務局 大塚
■家業を継ぐまで

当社は南区で製本業を経営しています。子供の頃は、家に帰ると自然と家業を手伝うことが日常でした。そのため高校生の頃には「将来、こんな仕事に就きたくない」と考えるようになりました。東京の大学に進学し、家業とは距離を置いて生活していました。
しかし転機が訪れました。専務を務めていた叔父が急逝し、会社の経営が不安定になりました。父から「お前、帰ってこんか、一緒に仕事をせんか?」と言われ、心の中で何かが動き、30歳で帰郷することを決意しました。
実際戻ってみると、経営体制がトップダウンであることや職場の雰囲気の悪さなどに不満を感じ、やる気が薄れていきました。このような状態が2年ほど続いたある日、父が病気で倒れてしまいました。私が急遽経営を引き継ぐことになりました。経営の知識や技術もない、仲間もいない状態で始まりました。
■経営の苦悩と変化
会社を引きつき継いだ数年間は、仕事を止めずに続けることに必死で、手探りの日々が続きました。
そんなある日、今でも忘れられない事件がありました。それは、社員が取引先でシャッターを壊したのにも関わらず、報告がありませんでした。理由を聞くと「社長に怒られることが怖かった」と言われました。この出来事がきっかけで、自分の経営のあり方について真剣に考えるようになりました。
社員との関係に悩んでいた頃、参加した例会で「コインの表と裏」という考え方を学びました。「良いところと悪いところは表裏一体。マイペースな部分を無くすと穏やかな性格も無くなるかもよ」と言われ、私は社員の短所ばかりを見て、叱っていたことに気づかされました。この学びをきっかけに社員との向き合い方が大きく変わりました。職場の雰囲気も明るくなり、今では社員の得意なことを活かして仕事を任せることで、私がいなくても会社が回るようになりました。
■めざしていく会社の在り方
この頃から、地域のイベントに参加するようになりました。印刷物の余りを使い、メモ帳を作る体験を開いています。これまでは、本は商売道具の一つに過ぎないと考えていましたが、子供たちが楽しそうに作る姿を見て、本を通して地域貢献できていることを感じました。
またある日、テント生地で製本する依頼を受けました。初めての依頼で受け入れるべきか悩んだ時に、同友会の仲間から「できない理由を探さずに、どうすればできるか考えてみたら?」と言われ背中を押されました。

同業にも相談しながら試作を繰り返して、無事作り上げることができました。人の思いを形にする喜びや、できないことができるようになる感動を強く感じました。そして依頼者が私たち以上に喜んでくれ自信を深めることができました。
「本づくりを通して、子供たちを笑顔にし、地域を元気にできる会社でありたい」と強く思うようになりました。
■本づくりで未来へつなぐ
娘が学校で将来の夢について「お父さんの会社を継ぎたい」と発表してくれました。私の仕事を見て、同じ仕事をやりたいと思ってくれたことに感動しました。そのためにも社員が働きやすい職場づくりや女性が活躍できる職場づくりを社員と一緒に考えていきたいと思います。
関わる仲間の何気ない言葉がきっかけで解決のヒントを得て、仕事に対する意識を変えることができます。子供たちの憧れの職業になることが私の目標です。デジタルの時代だからこそ、ものづくりや思いを形にすることの喜びを大切にしていける姿になりたいです。皆さんもなりたい姿を考えてみてください。