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2025.09.30

「そもそも関税とは何か?税関とは何か?」呉支部 政策&地域内連携推進&環境経営委員会合同勉強会

開催日時:
2025/08/07(木)
会場:
同友会呉事務所
人数:
17名
報告者:
講師:神戸税関 広島税関支署 呉出張所 出張所長 酒巻 博文 氏
文責者:
事務局 木下

■税関とその役割

税関の基本業務は2つあります。①税収業務。日本に輸入される貨物に課される税金、関税の徴収を行います。関税は輸入品のみに適用され、輸出品には課されません。②関所業務。麻薬や銃器などの不正薬物や危険物の国内流入を阻止します。空港や港での検査や麻薬探知犬を活用することで、水際対策を実施しています。

日本国内には主要な税関が9つ存在し、各地域を管轄しています。呉市を含む広島県は「神戸税関」に属しており、その本部は神戸市中央区に設置されています。さらに、呉市には広島税関支署呉出張所(呉税関)があり、呉市・江田島市・東広島市・大崎上島町地域を管轄しています。

呉税関は特に海の税関として機能し、広範囲の海岸線を対象に業務を行っています。業務内容には、外国船への張り込みや乗組員の検査、貨物の倉庫・工場での検査が含まれます。また、呉市の「呉港」「広港」「仁方港」の3つの港区から成る開港が、自由貿易を許可された法律で定められた場所となっています。これらの業務を通じて、税関は輸出入の円滑化と国内の安全を維持するための重要な役割を果たしています。

■関税の目的と効果

関税とは、日本に輸入される貨物に課される税金のことです。大きな目的は二つあります。①国内産業の保護です。価格の安い外国製品が日本に流入すると、国内製品が売れにくくなり、メーカーや関連企業の業績悪化、従業員の解雇につながります。関税をかけることで、外国製品の価格を調整し、国内企業の競争力を保つことが可能です。②国の税収の増加です。関税収入は日本の財源として活用され、公共の利益にも貢献します。
自動車を例にあげます。海外の高級車が100万円で輸入された場合、国内の同等の車が300万円であれば競争力を失います。しかし、関税を300万円課すと、輸入車は合計400万円となり国内製品が売れやすくなります。この仕組みが国内産業の保護につながります。
また、関税は自動車だけでなく、牛肉、豚肉、野菜、魚介類などの食品にも適用されます。これにより、日本の農林水産業や畜産業界が衰退するのを防ぎ、国内経済を守る役割を果たしています。

■関税はバランスと調整が重要

外国から日本に輸入される貨物に高い関税をかけすぎると、以下のような問題が生じる恐れがあります。
①「良質な外国製品が入手しにくくなる」
高額な関税により、日本国内での販売価格が大幅に上昇し、消費者が購入しづらくなります。例えば、スマートフォン本体価格が3万円でも、関税を27万円課すと、販売価格が30万円以上になり、買い控えが発生します。

②「産業への影響」
小さな部品に高額な関税を課すと、その部品を使用する電化製品の価格が上昇し、日本のメーカーや消費者に悪影響を及ぼします。日本企業が製品を安価で販売できなくなり、競争力を失う可能性があります。
適切な関税の適用は、国内産業の保護や市場価格の調整を目的としています。しかし、関税率を一律に高く設定するのではなく、国内産業の状況や輸入品の特性に応じて慎重に判断する必要があります。

特定の品物や特定の国にだけ高い関税をかけると、以下のような影響が考えられます。
取引相手国との関係が悪化し、他の分野(例:貿易摩擦や日本バッシング)に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、関税政策には、日本国内の事情だけでなく、諸外国との関係性を考慮したバランスが求められます。
関税は、国内産業を保護し、経済の安定を図る重要な手段ですが、過剰な関税は消費者や企業にとって不利益をもたらします。同時に、国際関係を悪化させないためにも、慎重な政策運用が必要です。