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2025.11.28

「3つの課題から生まれる新しいビジネスモデル~経営理念は『おもしろい』をエンジニアリングする~」福山支部例会 報告要旨

開催日時:
2025/09/10(水)
会場:
ローズコム
人数:
72名
報告者:
(株)マスナガ 代表取締役 森 弘国 氏(熊本同友会)
文責者:
事務局 本多

当社は熊本県益城町にある機械工具の商社で、半導体・鉄道・自動車産業を中心に取引を展開しています。私は大学卒業後にデザインの道を志していましたが、後継せざるを得ない状況になり、マスナガに入社しました。ところが直後にリーマンショックが発生。売上は大幅に伸び悩みました。
 元々物づくりが好きだった私は商社に興味が持てず、会社の存在意義を模索する日々を送っていました。私は父親に続いて同友会に入会し、経営理念や経営指針の大切さを実感しました。その一方で、同友会で学ぶにつれ、会社で父親と対立することも増えました。
その後、私は31歳で社長に就任し、債務超過ギリギリだった数字の改善と社風づくりに力を入れました。社員の匿名アンケートや個人面談を行い、若手社員の採用を始めました。

採用を進めることで人を育てる・育てられる風土が少しずつ生まれ、私は社内で一つの軸のようなものを共有したいと思うようになりました。そこで思い浮かんだのが創業の精神である「お客様の困り事にNOと言わない」です。今思えば、父がよく言っていた言葉でした。自分たちが売りたいものではなく、お客様の要望にプラスアルファを提供することが私たちの仕事の原点です。社内でこの思いを共有することで、少しずつ売上の一局集中から脱却することができ、売上は約6年で180%アップ、粗利率も業界平均の17%を大きく上回る約27~30%を推移するようになりました。

■私たちの使命と新しい経営理念

会社に陰りが見え始めたのが2019年末です。それまで7年間は離職が0名だったのですが、12月に1名退社すると続けて数名退社していきました。辞めていく社員は本音を言いません。何かが違う、何を変えたらいいのか…。私はもう一度会社を振り返り、社員を中心に経営理念委員会を立ち上げました。
そこで新しい経営理念「“おもしろい”をエンジニアリングする」が誕生しました。エンジニアリングは私たちの事業領域です。工具や部品は無数にある反面、お客様はどの組み合わせが最適なのかわかりづらく、お客様と目的を共有しながら最適なものを提案していくのが私たちの使命だと考えました。そこに発見や共感、挑戦、成長と言った意味の「おもしろい」を理念として掲げました。

■新しい仕事づくりを生むのは…

経営理念の次に私は市場分析を行い、経営戦略を考えました。市場と業界の分析でわかってきたのは人口減少と採用難、業界の縦割りの3つの課題でした。戦略を立てるには分析だけではなく、自社の強みの把握が必要です。中小企業の経営者はすぐに弱みは言えるのですが、必要なのは会社の強みの定義です。

2020年には本社移転と新社屋の建設を行い、社内をソリューション系とキカイ研部門の2つに分けました。エンジニアリングの力を活かし、お客様の小さいけれど切実な悩みに対して最適な物を提案できる相談窓口を設けたほか、キカイ研部門ではマスナガキカイ研究所を立ち上げて、24時間工具を販売する「プロショップ」と物づくりのワーキングスペースの「ファクトリー」の2つの事業を始めています。この研究所では3つの課題解決をめざしてセミナーや展示会を通じたメーカー同士の交流を図り、学校とも連携し様々な情報発信の場にしたいと考えています。
私は新しい仕事づくりは経営者一人の力ではなく、社員一人ひとりの挑戦や原体験から生まれることを実感しました。経営理念の“おもしろい”の実現のためにも、これからもお客様との成功体験を積み重ねられる会社を作っていきたいと思います。

<会社概要>㈱マスナガ
設立:1975年
資本金:1,200万円
従業員数:26名
事業内容:機械工具・ファスニング・半導体関連部品・自動装置関連部品等の販売
会社URL:https://msng.jp