経営フォーラム2025 第1分科会 「だから私は動き続ける~私と会社を変えた同友会活動~」
- 開催日時:
- 2025/10/07(火)
- 会場:
- TKP広島本通駅前カンファレンスセンター
- 人数:
- 43名
- 報告者:
- ペアコム(株) 代表取締役 梨木 彩加 氏(福山支部 青年部)
- 文責者:
- 事務局 保田
■会社紹介
我社は電気機械器具製造業で、1985年に父が創業しました。事業内容は、漏電ブレーカーの部品組み立てです。社員数は67名(男性7名、女性60名)。1千万個出荷をしても1個も不良品がない状態を我社の基準とし、「世界一のダントツ品質」を目標に掲げ、社内で一丸となって頑張っています。品質のほかに、従業員の交わる委員会活動を設け、部署の垣根を超えコミュニケーションを取ることを大切にしています。
■同友会入会のきっかけ

ペアコムに入社したのは2017年、代表交代は2022年、現在社長4年目です。入社直前期は2年連続の赤字で、97%が漏電ブレーカーの仕事でした。一社依存の高い状態から、第二の柱をつくる担当者として頑張ってくれないか、と父から言われました。値上げが認められたのは30年近くで2回だけで、父は単価交渉に後ろ向きな様子でした。会社がピンチなのになぜ自分で営業に行かないのかという疑問、加えて、父の社員さんに対する態度が私には社員を大切にしていないように見えていました。
この頃の父へ対するモヤモヤした気持ちや、事業継承に悩んでいたことを知った知り合いが、福山支部例会に誘ってくれたのをきっかけに、事業継承の勉強会へ参加しました。父のいないところで悪口を散々言い、同じテーブルの人に諭されました。
一度はもう参加できないとも思いましたが、社長になる勉強をするなら耳の痛いことも言ってくれる同友会がいいと思い、入会を決意しました。
■「思い」の事業継承
同友会活動の中で、会社は弱みばかりで強みは一つもないと言っていると、青年部の先輩からは、一度父と話すべきだと強く勧められました。はじめは、自社の強みは何か尋ねてみることにしました。返ってきた答えは、パート依存度が強いことでした。自身で営業に行かない理由を尋ねると、実績のない人間が社長になると苦労するから、梨木彩加の実績にするためだと言われました。なんて都合のいいことを言うのだろうと腹が立ちました。素直にアドバイスを聞いて父と対話したつもりでしたが、よく考えれば父に対する尋問だったと思います。
先輩会員から、他社を見て気付きがあるかもしれないとアドバイスをいただき、会社訪問も始めました。いろんな切り口で会社を訪ね、悩みを打ち明け、お話を聞かせてもらいました。私はいろんな経営者の方と話すことが非常に面白いことだと気づき、支部例会・青全交・女全交・経営フォーラム等、いろんな行事に出席しました。
中でも、岡山同友会代表理事の門田 悦子 氏(㈲田中製作所 代表取締役)に、社長になったきっかけをお聞きしたことは、私にとって大きな意味がありました。門田さんのお話を聞き、父と話すことそのものが非常に重要で感謝すべきことだと感じることができました。きちんと向き合って私自身が変わらなくてはならないと反省しました。
後日、改めて父に話を聞きました。いずれ会社を継ぐ際に分からないことだらけのままではいけないこと、父が社長でいる今のうちに、納得いくまで話を聞かせてほしいことを伝えました。父はうんうんと頷きながら、納得いくまで話をしようやと言ってくれました。とても時間はかかりましたが、たくさんの先輩会員にアドバイスをもらい、創業者である父に対して感謝や尊敬の念が芽生え、「思い」の事業継承ができました。
■同友会での学びと気づき

同友会はグループ討論で考えを発言する場面が多くあります。私はそれがとても苦手です。自分の発言に自信が持てず、軸がないのですぐ揺らいでしまいます。代表交代し社長になったけれど、まだまだ全然考えがなく、もどかしい思いをしました。
同友会会員と話をする機会は、グループ討論やセミナーだけではなく、例会後の懇親会の場でも多かったです。2021年、兵庫同友会の青年部例会に参加しました。代表交代をする前に会社を良くしたいけれど、どうすればよいか分からず漠然と悩んでいたため、3期分の決算書を持って兵庫へ向かいました。
決算書を見てもらい、問われた際に弱虫発言ばかりする私に、「会社継ぐの辞めたらいいやん。結局あなたがやるかやらないか、覚悟の問題じゃない」と言われ、とても落ち込みました。今年の定時総会に参加した際には、「品質の高い仕事をしているなら、なぜそれをもっと表に出さないのか」と言われました。我社の社員はすごいのだと語るのが私だと感じ、少し話すことに自信が持てました。
経営の話をする中で、胸をえぐられるような思いを何回もしました。言ってくれる方もしんどいと思いますが、情けない思いをしながらも学びや気づきをもらって帰りました。例会だけでなく懇親会にも参加し、普段と違う人と経営談義をすることで自分にとってプラスになると思います。
■学びの実践
同友会の学びで一番優先順位が高かったのは、「職場環境の改善」でした。誰のために経営をしているのか、何度も自分に問いかけなおし、社員のためだと何回も思いました。駐車場を広くしたり、制服デザインをリニューアルしたり、他県同友会の事例を真似して取り入れてみたり、目に見えて分かりやすく嬉しくなる改善からはじめていきました。
働きやすい職場になっても、赤字で成長のない会社に夢も希望も持てないと、一社依存からの脱却に取り組みました。きっかけをくれたのは、長野同友会 手塚 良太 氏(㈲テヅカ精機)でした。2023年、父と2人で手塚さんのもとへ伺いました。我社と同じ手作業で電子部品の組み立てをされていますが、違ったのは単価でした。当時、我社では1時間あたり1,058円の単価でしたが、手塚さんからはざっくり2倍の数字を言われ、私も父もショックでした。同時に戦わなければという気持ちも奮い立ちました。交渉の末、1,058円から1,270円になり、20%の値上げ交渉に成功しました。
■そんな時こそ同友会
新単価になり数カ月経った頃、先輩会員が決算を見に会社へ来てくれました。そこで会社があと3カ月しか持たないと言われたのです。前年より単価は上がっていましたが、注文台数が減っていた時期でした。売上が6%下がり、役員報酬を上げたことで固定費が10%上がっていました。月々の返済358万円を払っていくと会社の現預金は減る一方です。説明してもらって初めて理解しました。同友会に出ることが優先になって、経営をさぼっていたと感じます。
経営に集中するために、同友会へ行くのをやめようと思いましたが、頑張る力をくれたのもまた同友会でした。先輩方の知恵をお借りし、まずは銀行と交渉し、返済年数を15年へ引き延ばしていただきました。入社時、97%を占めていた漏電ブレーカーの仕事も、現在83%になり、一社依存の経営からの脱却に近づきました。値上げ交渉も、毎年5%ずつ上げていきました。福利厚生の面では、退職金の積立をはじめました。今期は昨年の賞与より25%上乗せするという計画を立てています。
■社員の変化
自社の委員会活動では、社員同士のコミュニケーションが増えるイベントを提案してくれるようになりました。また、幹部社員とパート2名が、お客様に関わりたいという理由で、一緒に営業へ行き、その場で受注に至ったことがあります。労働環境を良くすることで、社員の主体性が向上したのではないかと感じています。

■だから私は動き続ける
私の思い描くペアコムの未来像は、世界一の下請けです。いいものを納め、期限を守り、おもてなしの心で対応する、普段当たり前にやっていることですが、これを通して当てにされる頼られる企業になりたいと思っています。
私は成長に時間がかかるタイプの人間です。私には社員を幸せにしたいという想いがあります。社員のために頑張ろうと思うといつも力が湧いてきます。社員の幸せのために成長したい、強くなりたいという思いが私の原動力になっています。本気で変わりたいのであれば、行動量は多いほうがいいと思っています。同友会のたくさんの経営者との出会いが自分を変えてくれました。一人ではなかなか変われないから、たくさんの人と出会って自分自身をブラッシュアップしていくべきだと思います。
【会社概要】ペアコム(株)
創業:1985年4月1日
資本金:1,000万円
社員数:68名
事業内容:漏電ブレーカーの電子回路の製造、リード線切断加工、制御盤組立
URL:https://www.peacom.co.jp/