同友ひろしま/2018年/12月/News

第1分科会 持続可能なビジネスモデルの構築に向けて ~金融機関さんの力を私たちはどう利活用するか

講師:特定非営利活動法人 日本動産鑑定 会長  森 俊彦 氏

■日本の持続可能な社会の実現は中小企業の元気から

 私は、金融庁をはじめ、経済産業省、環境省や内閣府などの研究会や会議の委員を務めてますが、中小企業を代表する立場で参加しています。その一つに、「融資に関する検査・監督実務についての研究会」(金融庁)というのがあり、20年前に作られた金融検査マニュアルを廃止した後の検査・監督実務について討議しています。金融検査マニュアルで、バブル崩壊後の危機的状況にあった不良債権の処理は進んだものの、金融機関の担保・保証依存が過度に進み、借り手の事業性を見てお金を貸すという「融資の原理原則」が後退してしまったという問題意識です。
 多くの中小企業は、人口減少や少子高齢化、人手不足などの非常に厳しい状況の中でも、日夜、果敢に挑戦し続け事業リスクをとっています。一方で、金融機関からは、「担保・保証がないと、(特にリスクのある)中小企業には融資できないと言われた」などの声が次々と私に伝わってきます。これらは、金融庁が行っている中小企業アンケート等の結果によっても裏付けられています。
 金融機関が担保・保証を幾らとっても、中小企業が挑戦している事業リスクそのものを減じることはありません。本来金融機関が取り組むべきは、銀行法の第1条「国民経済の健全な発展に資することを目的とする」に明記されているように、中小企業が果敢に事業リスクをとっている、そこに金融機関は寄り添い、事業性評価、すなわち事業をしっかり理解し融資や本業支援をすることで、中小企業の企業価値、つまり、付加価値である営業キャッシュフロー(利益)を改善し持続的に成長させていくことが、国民経済の健全な発展に資することにつながります。
 今、日本経済が直面しているのは、少子高齢化や廃業の嵐、事業承継問題などです。中小企業が疲弊していけば、地域金融機関も成り立たちません。お金を生み出す中小企業を後押しするのが金融機関の本来あるべき姿で、これを「共通価値の創造」と言います。中小企業が営業キャッシュフローを高めれば、その「共通価値」を、金利や手数料としてお客様からいただくことで、自らの持続可能なビジネスモデルの実現につながります。これが地域、そして日本の持続可能な社会の実現につながるということです。
 金融庁は、地域銀行106行の内、過半数の54行で本業利益が赤字、内52行で2期以上連続赤字になっていると公表しました。貸出などの本業で儲けにくくなっている金融機関の厳しい実態が分かりますが、やはり中小企業の元気を引き出し、利益を生み出す力を高め、それを分かち合うことで金融機関の経営を安定化させる「共通価値の創造」が大事ということです。

■意識の抜本改革と金融仲介機能のベンチマーク

 2年前、金融庁は「金融仲介機能のベンチマーク」を発表しました。これは、金融機関が中小企業にとって優れたサービスの提供を競い合い、また中小企業が寄り添う良い金融機関を選択できるよう、金融機関の取り組みを「見える化」するためにつくられた指標と言えますが、これによって金融機関が中小企業を選んでいた時代から、中小企業が金融機関を選択できるようになりました。正に時代の大転換ともいうべきことです。
 金融行政では、先ほど述べましたように、金融機関の貸出における担保・保証への過度の依存をもたらした「金融検査マニュアルの廃止」も打ち出していることを合わせて考えると、金融庁の検査官・監督官だけでなく、金融機関も中小企業経営者の皆さんもパラダイムシフト、コペルニクス的転回といえるほどの意識改革をしなければならないと思っています。すべての関係者が、この意識改革を行わなくして、「共通価値の創造」による日本の持続可能な社会の実現はできません。

■中小企業経営者による寄り添う良い金融機関を選択するポイント

 中小企業経営者の皆さんは、自分たちのために頑張ってくれる金融機関を見分ける力を付けることが大切です。そのチェックポイントは5つです。
①担保・保証人から入るのではなく、事業をしっかり理解し、融資や本業支援をしようとしているか。
②中小企業のライフラインである「専用当座貸越」を設定し、運転資金を必要な時に必要なだけ使えるようにしてくれているか。中小企業は、自己資本が元々、十分でないところが多いのですが、この「専用当座貸越」は事実上の自己資本になり、運転資金を支えるわけです。運転資金は、社長さんが売れると思ったものを仕入れ、メーカーだと作り、思ったように売れて資金化されるまでをつなぎながら、それを回していくという意味で、ビジネスモデルそのものです。ところが、運転資金を証書借入(長期借入)している経営者の方も多いと思いますが、毎月の約定弁済という意味で自己資本ではありません。また、当座貸越の印紙税は200円に対して、証書貸付の印紙税は高いです。
③経営者保証ガイドラインを活用しているか。①で金融機関が事業を理解して融資や本業で支援すれば、中小企業の業績は改善します。さらに、②で日々のビジネスに必要な運転資金が専用当座貸越によって支えられますし、借入資金と仕入れの材料や商品との紐付けができるようになります。中小企業で数多い「どんぶり勘定」の是正にも直結し、経営管理が改善します。つまり、法人と個人がきちんと分けられ、業績が安定してくると情報開示も適切に行われるようになり、経営者保証ガイドラインによって経営者保証はいらなくなります。これは円滑な事業承継につながります。
④保証協会の保証制度ありきの融資(金融機関みずからの目利きではなく協会保証が融資条件)になっていないか。
⑤金融機関としてあるまじき行為(取引継続のための脅しなど優越的地位の乱用)をしていないか。4番目までは「金融仲介機能のベンチマーク」(55項目)に入っています。

■ローカルベンチマーク(ロカベン)で事業の「見える化」を

 ロカベンは、中小企業の経営状況の把握、つまり「健康診断」を行うツールとして経済産業省が公表したものです。内閣官房、金融庁、総務省などの政府機関、貸し手のメガバンクから信用組合、借り手の商工会議所、商工会など、さらに中小企業支援機関の中小機構、日本税理士会、TKC全国会などが参加。私も有識者として委員を務めています。  経営者や金融機関が同じ目線での対話にロカベンを使うことが期待されており、財務状況だけでなく、経営者のビジョンや技術力、販売力の強み、顧客のリピート率や従業員の定着率など、財務数字に表れない企業情報が「見える化」されます。中小企業経営者の皆さんは、ロカベンを活用して経営の「見える化」に努め、金融機関との信頼関係の構築に役立ててもらいたいと思います。
 私は省庁の会議で、ロカベンを政府の補助金・助成金などに紐づけしてほしいと発言しており、すでに、IT導入補助金の経営診断にはロカベンを添付するようになっています。今後、中小企業が補助金・助成金を受けるには、ロカベンが必要不可欠となるでしょう。

 以上の話は、「中小企業経営者の金融機関との付き合い方と眼力強化」というタイトルで、中小企業基盤整備機構のHP(下記アドレス)よりユーチューブで配信されています。経営者や経理・総務関係の社員の方々に加え、金融機関、税理士、診断士などの方々も見ていただき、中小企業の元気を総力を挙げて後押ししていければと思います。
 http://www.smrj.go.jp/jinzai/tokutei/098587.html  

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