同友ひろしま/2021年/12月/News

経営フォーラム2021 第4分科会「 BIG勝つ! ~『食』で、人の生活や心を豊かに~」

報告者 ㈱スグル食品 専務取締役 大塩 和孝 氏

■価値観の変化はチャンス

 我社は、魚を主原料とした食品メーカーで、駄菓子の「ビッグカツ」、お土産物の「カープカツ」やかまぼこ、おつまみに近い商品を製造しています。呉市に3拠点の工場があり、北海道から南は福岡までに15拠点の営業所があります。戦後すぐ、祖父が創業し、2代目の父が現社長です。私自身は1989年生まれ。東京の大学を卒業し、そのまま就職しました。2015年に家業であるこの会社に事業承継のために入社し、2018年に家族を連れて呉に戻ってきました。承継しようと思ったのは、親孝行のためというシンプルな理由でした。
 新型コロナウイルスがもたらした「価値観の変化」を主なテーマとして、弊社のこれまでの取り組みをお話しします。

■地方の中小企業はチャンス

 今回の大きな変化は、感染拡大防止の観点から外出を控え、人とはできるだけ会わないようになったことです。特にメディアは、簡単にインターネットで見つかる、パッと見ておもしろさが分かるものに取材対象を求めるようになりました。この価値観の変化は、地方の中小企業にとってメディア戦略のチャンスと捉えました。実際、昨年までのメディア露出は年に2~3件でしたが、今年はすでに80件取り上げて頂きました。このおかげで、通信販売の売上は3倍に、新商品の売上は2.5倍に増えました。具体的に何をしたのかをお話します。

■どうブランド化するか

 最初に考えたのは、「当社は何なのか」ということでした。以前は「フライが強みの水産駄菓子・珍味メーカー」と説明をしていました。よく考えると、これでは強みが伝わりにくいと気づきました。そこで、話題性も考えて「ビッグカツを作っている会社」と捉えなおすことにしました。ビッグカツは、食べた方それぞれが、「小学校の時に食べたなぁ」というそれぞれの思い出を持たれているので、それをイメージしてもらえます。
 次にどうブランド化していくかを考えました。我社ではビッグカツは定番商品、やはりこれを起点にお客様の注目を集めようと考えました。「何かおもしろいことをしている」ということを発信するために活用したのがツイッターでした。フォロワーも現在は7万人になっています。プレスリリースも積極的に行い、様々なメディアで取り上げて頂けました。
 ここまでで、ようやく「ビッグカツを作っている会社はスグル食品というらしい」とお客様に認知して頂けるようになります。次の段階は、商品名と会社名の繋ぎ込みでした。ここでは、ウィキペディアを活用することに力を入れました。我社がメディアで取り上げられた情報を書き込むことで、当社を前面に押し出せるようにできました。これで「ビッグカツ」で検索するとウィキペディアが検索上位でヒットし、そこから自社のHPに誘導し、ビッグカツ以外の商品も知ってもらえるようになりました。

■会社の価値観も変化した

 次に、会社の価値観がどう変化したかを考えました。社員の視点で考えるとリモートワークや働き方改革含めた働く環境をどのように快適していくか、です。これは組織改革のチャンスだと捉えました。課題を解決するために様々な取り組みを行いました。三つの部門ごとにお話しします。
 製造部の課題は、離職率の高さでした。大きな原因は二つありました。一つ目は「上司と現場の不和」でした。過去の禍根で健全ではない嫌われ方をされていたり、求心力もなくなり総スカンを食っている状態でした。そこで信頼の回復のために取り組んだのが人事評価制度の完全刷新と会議体の設置でした。制度を評価ではなく育成と対話を目的としたのです。プロジェクトを立ち上げ、2年かけてリーダーの役割やあり方を理解してもらうことに努めました。また、会議では現場の意見を集約し、即対策、即回答ができるようにしました。
 二つ目は「現場同士の不和」です。価値観の違いや不公平感で衝突が起きるとか、協調性のない人が周囲と揉めているとかというものです。これについては、育成計画書を作成し、全員で共有、育成ルールも明文化しました。さらに、現場同士で課題を出し合う会議体も設置しました。当初は職場や他部署、他人への不満が多かったのですが、要望・不満にはリアルタイムで上司が対応するようにしました。すると、段々と不満から業務効率の提案に、意見の質が変化したきたのです。

■デジタル化で業務削減

 次に、営業部の課題は移動時間の長さでした。原因はある文書をファックスするためだけに営業所戻ったり、1人当たり半径百キロ近いエリアを担当するものがいたり、月1回の呉本社での営業会議でそれぞれ拠点から移動する時間などがそうです。そこで、WEBデータベース型の業務アプリ構築クラウドサービスを導入しました。これで社外での事務処理が可能になりました。またWEB会議も導入し、本社への移動時間がなくなりました。さらに、顧客・商品の絞り込みで、行動コストを削減することができました。
 次に本社の課題は、アナログ業務の多さでした。印刷物を紙ではなく電子データ化するシステムを導入し、印刷やファックス、スキャン業務にとられていた膨大な業務量をなくすことができました。営業部でもあった電話対応にとられる時間も、デジタルシステムの活用で効率的にできるようになりました。残業が大幅になくなったことはもちろん、リモートワークも可能になりました。
 このように様々な改善に取り組んでみて、感じたことは4点です。
①構想は全体最適、浸透は個人メリット。会社に利益が出るからと言っても、社員個人の作業が楽にならないと伝わらないということでした。
②従来のやり方と並行し、少しずつ改革。一つの書式を一ヵ月かけて変更して、それが終わったら次の書式にというように一つずつ、ゆっくりと進めました。
③頻繁に効果測定とアンケートとり。現場は新しいシステムを導入すると、少し手間がかかっても納得してやってしまうのです。私も上司もそれに気づかず、そのやり方をずっとやり続けるということがありました。週に1回、3日に1回とか、やりづらいところはないかアンケートをよくとりました。
④やりながら業務マニュアルを修正。最初に作ったものはそのまま使えないので、現場の人に任せて、少しずつ修正しながら、いかに当事者意識を持ってもらうかを大事にしました。

■自分も価値観が変わった

 最後に、自分についてです。実はMBAの資格を持っていて、戦略立案とかマネジメントなどを得意としていました。しかし、価値観の変化で、こういう抽象的なスキルの重要性は低下したように感じました。それよりも、得意分野を見つけ、ゼロから実績を作っていくことが大事だと思うようになりました。振り返れば、自己分析のチャンスだったわけです。
 今後は、原材料の不足や高騰もあり得るので、現在の魚に代わる原材料を模索することが大きな課題です。また、単なるものづくりの会社ではなく、「家族の団らんを創造する会社」になりたいという思いを持っています。個人的に活動を強化していきたいのは、インスタグラムの運用です。インフルエンサー(世間や人の思考・行動に大きな影響を与える人)として発信できるようにしたいです。今回のコロナ禍で「ファン」がいる方は強いと実感したからです。
 3年前に呉に戻って最初に感じたのは、「呉はいい人やいい会社やいい場所がたくさんある」ということでした。この「呉」という資源を活用できる「プラットフォーム」を作っていきたいというのが、現在の思いです。

【会社概要】
社員数:180名(パート含む)
事業内容‥駄菓子、珍味、お惣菜の製造及び販売
【経営理念】限りある資源を有効に活用し、食文化の向上に努める

広島県中小企業家同友会

このサイトは、「広島県中小企業家同友会」が - 共に学び共に育つ - をモットーに運営しています。

詳しくはこちら

同友ひろしま 2021年 12月 の記事一覧

報告者 ㈱吉村 代表取締役  橋本久美子 氏 ■社長は明日のメシ担当  ㈱吉村は昭和7年創業、今年で89年になります。私は3代目、2人姉妹の長女で、婿養子を取れと育てられてきましたが、結婚し橋本になりました。吉村の姓は妹…

>続きを読む

報告者:㈱タイ・アンド・ギー 代表取締役 板坂裕治郎  氏 (広島東支部) ■自己紹介  1990年3月4日に一般人が絶対に着ない服だけを扱う洋服屋『タイ・アンド・ギー(広島弁で「かったるい」の意)』を広島市東区牛田本町…

>続きを読む

報告者:㈱ジェイ・スマイル 代表取締役  松下 仁 氏(広島安佐支部) ■脱サラしてオーナーに  学生時代、私はコンビニでアルバイトをしていました。私が働いていた店のオーナーは頼り甲斐があり、高校生の私を戦力として扱って…

>続きを読む

報告者 ㈲シャルダン商会 代表取締役  藤田 哲也 氏 ■代表就任~現在まで 数字と経営者の姿勢の変化  2013年に社長就任をしました。当時、私は常にピリピリしており、社員は私の顔ばかりみて仕事をしていました。そんな経…

>続きを読む
トップヘ