同友ひろしま/2021年/12月/News

経営フォーラム2021 第2分科会 「かけがえのない 地域になくてはならない会社へ」

報告者:㈱ジェイ・スマイル 代表取締役  松下 仁 氏(広島安佐支部)

■脱サラしてオーナーに

 学生時代、私はコンビニでアルバイトをしていました。私が働いていた店のオーナーは頼り甲斐があり、高校生の私を戦力として扱ってくれるような方でした。「将来、こんな人になりたい!」と、いつしか私もオーナーになる夢を抱くようになりました。
 この夢は、高校卒業後、勤めていた会社でも拭い去ることが出来ず、遂には会社を辞め、脱サラする事を決意しました。そしてセブンイレブンに加盟し、独立することになりました。
 お店の経営を始めた当初は、私を含めスタッフが全て新人ということもあり、お客様にはかなりのご迷惑をおかけしました。年中無休で6年間毎日16時間レジを打ち、お店の事を考える余裕などありませんでした。スタッフへのあたりもきつく、特にアルバイトはすぐに辞めていきました。年収もサラリーマン時代より下がり、「何の為にオーナーになったのか」と後悔する日々が続きました。学生時代に夢見ていた経営者なんて何も楽しくなく、辞めたいとさえ思うようになりました。
 しかし、気持ちを切り替え、生活するために仕事に励みました。頑張っていれば良い事もあり、本部からの提案で直営店に移転することが決まりました。さらに、近隣に新しい店舗のオープンが予定し、本部と協議を重ねて多店舗経営することになりました。
 2店舗とも順調に売上があがり、個人事業主の私も少しずつ収入が増えていきました。そして調子に乗ってしまった私は、段々と勘違いをするようになってしまいます。

■法人成りのきっかけ

 その頃から同友会には入会していましたが、ほとんど幽霊会員でした。ある日、地区会の役員さんから連絡があり、地区会で報告して欲しいと言われました。当時、経営も絶好調であり天狗になっていた私は、本当に好き放題に報告しました。「これ以上学ぶことはありません!」「最年少で2店舗経営し、売上利益も私の頑張りだけで右肩上がり!」などと、今考えればとんでもない報告をしていたのです。ある時、そんな調子に乗っていた私に、同友会のある先輩から「そんなお店で働く社員さんは幸せなの?」と言われ大きなショックを受けました。確かに、自分は社員に対して適切な人事評価なども行っておらず、社員の昇給や将来の事も考えておりませんでした。労務や教育、経営に関する課題は山積みであったにも関わらず、現実から目を背けていた自分にとっては、先輩の言葉は深く刺さりました。
 先輩の言葉で目が覚め、私はまず会社を整備することから始めました。まずは経営理念を作るところから始め、店内で使用していた「明るく、楽しく、元気よく」というスローガンを経営理念に組み入れました。また、経営指針書に関しては、事業計画や今後の展望などを1ページに書くことから始めました。就業規則もしっかりとしたものを作ろうと考え、同友会会員の社会保険労務士法人さんにご協力頂き一緒に作成して頂きました。

■女性活躍推進

 法人化した後、教育面にも力を入れるため、求人社員教育委員会主催の新入社員研修に参加し社員と共に学びました。また、女性キャリアアップセミナーでは、新卒で入社した女性社員と共に女性のキャリアアップや働き方について学習しました。
 当時、女性活躍という言葉をニュースでよく耳にするようになり、自社でもその女性社員を店長候補として育ててみたいと思うようになりました。
 その女性社員はみるみる成長し、23歳で母店の店長となりました。店長となり店舗を女性の目線で色々変えてくれ、お店がガラッと華やかになりました。私はこの女性店長が今後のライフイベントを迎えても、育休などを整備し、店長として戻ってきてほしい、定年まで働いてほしいと考えております。

■2店舗とも女性店長へ

 ある日、また別の女性社員が店長として働きたいと志願してきました。彼女は小さなお子様もいて時間的制約もあったのですが、与えられた仕事はきっちりとこなし、店舗責任者の目線で自主的に働いてくれる方でした。
 この事について社内の者と相談すると、「深夜シフトで人手不足になったらどうするのか、何かトラブルがあったら女性で対応できるのか」と大反発を食らいました。事実、その女性社員さんが、子供の学校からの呼び出しなどで急遽仕事を抜けることもあり、そうした時は私がフォローしなければいけませんでした。
 反対意見が出ている事も本人には正直に話しました。彼女は「一つずつ問題を解決しながら店長として頑張りたい」と想いを話してくれました。
 その決意を聞き、女性が店長を務める事により生じる困難や苦労故に諦めるよりも、「店長として励んでいきたい」という女性社員の真っ直ぐな想いを尊重した方が今後10年先の我が社にとってプラスになると考え、店長への昇格を決めました。こうして2店舗とも女性が店長になりました。
 この取り組みは、「輝く女性事例」として、広島県働き方改革推進・働く女性応援課によるサイト「Hintひろしま」にも掲載して頂きました。

■地域のために新事業を

 お店をオープンして19年ほど経った頃、あるお客様が病院の帰りにタクシーでご来店されるようになりました。このお客様はお店のオープン当時からの常連様で、よく会社帰りにご来店して下さった方でした。現在は免許を返納されており、セブンイレブンに来たくてもなかなか来れなくなってしまったそうです。高陽町では、高齢化が進んでおり、他のお客様からも「お店に行きたいけど行けない」という声をよく耳にするようになりました。
 こうしたお客様にセブンイレブンの商品を食べていただきたい、またお買い物を楽しんでいただきたいと考え、「セブンあんしんお届け便」という移動販売車をスタートさせることにしました。
 移動販売車はなかなか利益が出ないという話を聞いて躊躇していましたが、同友会の仲間に相談したところ「大事な想いを持っているならやるべきだ」と肩を押していただき、本部に申請することにしました。
 この「セブンあんしんお届け便」は基本、中山間地域のものであり、うちの近隣ではスーパーやコンビニも多数あるので導入は難しいとの返答が本部から届きました。
 しかし、私はなぜやりたいかの想いを語り、成文化されたビジョンと計画書、そして経営指針書も一緒に提出しました。本部役員も「経営指針書なんて初めて見た。しっかりしたビジョンもあるし、これなら大丈夫だろう」と承諾して頂くことができました。
 初めての事業で苦労する事も多かったのですが、地域のご年配のお客様や、平日にお買い物へ行けない方などから「来てくれてありがとう!」「来週もきてくれないと困るよ!」と声をかけて頂き、とても喜んで頂くことができました。

■さいごに

 会社を大きく変えるために必要なこと、それはまず経営者が考え方を変えることです。そして、できない理由を探すのではなく、できるようになるためにはどうすべきかを考え、すぐに行動を起こさなければいけません。
 これからも地域の皆様から信用・信頼される「もっと近くて便利」なお店を目指し、私達の暮らす高陽町をもっと住みよい街にしたいです。地域の仲間と共に経営を維持・発展させながら頑張っていきたいと思います。

【会社概要】
従業員数:32名
事業内容:コンビニエンスストアを2店舗運営し、店舗のみならずネットコンビニも展開。
【経営理念】「明るく、楽しく、元気よくを従業員みんなで遂行し、地域のお客様に“近くて便利”を提供する」

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