同友ひろしま/2022年/12月/News

第3分科会「 個性ある多様な社員と共に生きる ~職場の仲間が教えてくれた大切なこと~」

報告者:イシケン(株) 代表取締役 石川 倫之 氏(福山)

 弊社は、1925年に祖父が創業した、寝具メーカーです。私は2000年に代表に就任しました。2016年に松岡製麺(有)の松岡さんに誘われ同友会へ入会し、現在、福山支部 バリアフリー委員長を務めています。
 弊社では10名の仲間が働いています。工場で働く7名の内、2名が障害者雇用です。

■人工羽毛の開発

 2003年の鳥インフルエンザの大流行で、弊社は大打撃を受けました。その際に事業の見直しを行い、価格決定権を手に入れるため、人工羽毛の開発に着手することを決めます。完成までには時間と労力が必要でしたので、当時は利益が出ずとも目の前の売り上げを追い求め、会社では社員に生産を急かしました。社員をただの労働力として認識してしまっていたのです。
 10年を経て、人工羽毛がついに完成しました。「これからはどんどん売れるはず」「幸せな未来が待っているはず」と、願っていましが、現実はそう甘くありませんでした。

 ■『すべては社長の責任』

 人工羽毛が完成したことによりOEMの注文が増加し、繁盛期には生産キャパを超え、社員は疲弊していきました。そしてある日、社員が退社してしまいます。「こんなはずじゃなかった」「もっと幸せになれるんじゃなかったのか」…そう思う日々が続きました。
 そんな時に、『すべては社長の責任』という言葉を思い出します。社員に負担が掛かっていたことは分かっていたはずなのに、私は人材の補充も、職場環境の改善もしていなかったことに、ようやく気が付きました。「私自身が変わらなければならない」、そう思っていた時に松岡さんと知り合い、同友会に入会させていただきました。
 同友会で体験報告をした際に、自分自身の行動を見つめなおしました。そして、3つの気づきを得ました。
①売り上げを求めるばかりに、自社の価値を貶めていたのは自分だということ。
②自社には働きやすい環境が必要だということ。
③めざすべき会社のヒントは、昔の就職案内にあった
ことです。  
 1960年後半の就職案内では、食事や福利厚生、教育の他、「家族の一員として迎える。」と、記載されています。社員を一人の人間として成長させようとしていたことが読み取れました。社員に向き合う姿勢である『人を生かす経営』、その手本が身近にあったのです。体験発表がなければ気づくことがなかったのかもしれません。

■「働きたい」を実現できる環境に

 2018年の西日本豪雨水害では、工場が浸水し、設備は水没。完全復旧まで1年以上かかりました。
 その日の朝は心が折れそうになって、会社で佇んでいました。すると、2名の社員がいつもより早く出勤して、ドロドロになりながら復旧作業をしてくれました。その姿を見て、会社が在り続けられるのは社員が毎日変わらず出社し、いつも通り働いてくれるからだ、ということに気が付きました。
 そんな社員の人生を背負っているからこそ、会社を復活させるべく行動しました。供給責任を果たすために、他社の製造工場と連携してアウトソーシングをしました。さらに人手不足の解消に向け、人材の応募を行いました。事務は民間の人材紹介会社に相談し、短い時間で募集を行いました。大勢の応募をいただいたことに驚き、来てくださった人達に応募理由を聞くと、子育てと仕事の両立を考えていること、時短のオフィスワークが珍しかったことを教えてくださいました。
 弊社に来てくれた方々の、「働きたい」を実現できる環境にするべく、仕組みを社内・社外で作りました。就労時間を変更し、制度や就業規則も改訂しました。社外に対しては、①出荷対応時間を正午まで(以降は翌日対応)と定め、②連絡・受注方法の一元化をお願いしました。問題がおこるのではないかと危惧していましたが、全くの杞憂でした。
 この取り組みで一番助かったことは、新商品や、先のことを考える時間を確保できるようになったことです。さらに社員の残業時間も大幅に減り、社員の笑顔を取り戻せました。時短勤務を取り入れたことで、お互いが申し合わせをするようになり、ミスが少なくなりました。

■新たな市場の開拓

 しかし、水害の影響は大きく、就任以来一番悪い状態になっていました。打開するためには新たな市場の開拓が必要と考え、ふるさと納税の返礼品と、クラウドファンディングを始めました。
 ふるさと納税には、「福山ブランド」の認定を受けた、「エシカルダウン」を出品しました。2019年から実施し、2020年には一番納税いただいた商品になりました。
 2020年の新型コロナウイルスの感染拡大時、世間がマスク不足に陥っていた際、社員から後押しもあり、マスク作成をクラウドファンディングでおこないました。大きな反響をいただき、多くの方に届けることができました。特に大きく変わったのは、社員の意識です。「良い商品をつくって、社会に貢献してください」と、応援の声を聴くことで、自分たちが必要とされていること、顧客に安心を届けていることを実感できた様子でした。
 新たな領域に向け、CFプロジェクトが始動しました。寝具メーカーの隣接領域での商品開発です。2021年には寝袋「多機能シュラフ・リレーバーシュラフ」の製品化に挑戦しました。多くの支援をいただきました。福山にもさまざまな挑戦を行う企業があることを知ってもらえればと思います。
 価格決定権を持ち、新たな市場を開拓したことで、コロナの影響が直撃しながらも、直近の決算では水害の影響から脱却することができました。

■社員が自信を得て働く姿を見られる喜び

 弊社では、多様な人材が働いています。各々の「働きたい」の障害になっている課題に気づき、寄り添いながら解決してきました。
 社員のHは、仕事を覚えることが苦手で、私たちが、「どこがわからないのか教えて」と尋ねても、言語化できませんでした。ですが、「わかるところまで教えて」と、尋ね方を変えると、彼は分かるところを教えてくれるようになりました。私たちはどこから教えたらよいのか分かるようになり、彼と意思疎通ができるようになりました。それから彼は自信をもち、一生懸命仕事を覚えていきます。実は、彼は一度覚えたことを忘れないのです。今では製造機械にある、200通りのプログラムナンバーを全て覚えており、お客様の要望に対して、即座に対応ができるようになりました。彼は、無くてはならない人材に成長してくれました。
 この、「わからない・できない」を「できる」にする、双方が理解できる言葉のことを、私たちは『共通言語』と呼んでいます。社員が自信を得て働く姿を見ることは、私の喜びであり、会社の財産です。この『共通言語』が、人を生かす経営につながるのではないかと考えています。

■人を生かす経営とは、地域・社会・人から必要とされる企業になること

 私の考える人を生かす経営は、常に自社を変化適応すること。社員の自信は企業の宝、社員と共に成長すること。そして、多様な価値観を柔軟に受け入れ、「働きたい」を実現する仕組みをつくることです。社員が誇れる企業になることで、地域・社会・人から必要とされる企業となると、信じています。
 これまでの危機を乗り越えられてきたのも、社員のお陰です。一人一人が「社会の役に立っており、顧客に安心と幸せを届けている」という誇りを持って働いてもらえるように、社員とともに羽ばたく強い会社をめざして、今後も精一杯チャレンジして参ります。

【会社概要】
設立:1957年
社員数:10名
事業内容:寝具等の製造・販売ほか 経営理念:変化適応・価値創造・相利共生・エシカル
URL:https://www.ishiken-futon.com

(文責 事務局 橋詰)

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