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2025.10.06

役員研修大学第1講「同友会の理念と歴史~学んで実践し続けて~」

開催日時:
2025/09/29(月)
会場:
Zoom
人数:
46名
報告者:
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜泰久氏((株)ヒロハマ 代表取締役会長、千葉同友会・相談役理事)
文責者:
事務局 青芝

今年も役員研修大学がスタートしました。役員研修大学は、広島同友会で実践してきた役員に学ぶSTEP1と、今年開催する全国のトップ役員の実践に学ぶSTEP2があります。組織経営をめざす方にはぜひぜひ参加して学んでいただきたい今回のシリーズ。第一講の報告を以下にご紹介します。

■同友会で学ぶときのモットー

私どもの会社はいわゆる一斗缶の部品を扱う仕事をしています。ほとんどの製品は自社で開発した製品で、部品といえどもメーカーという自負を持って仕事をしています。
業界動向は、バブルのころにいったんピークになり、現在はピーク時の半分くらいの規模になっています。業界ナンバーツーだったのですが、同友会で勉強したおかげで業界トップになることができました。
私は1990年に入会し、参加したらたくさんの学びがあったので、真面目に出席していました。すると一年後には支部の役員になり、県の経営労働委員会に入ることになり、年度の最後の一回に参加したら、じゃあ来年度は副委員長で…となりました。

県の役員もしないといけないということで、入会5年で千葉同友会の代表理事をさせていただくことになりました。その後、中同協の幹事を経て、幹事長、会長をさせていただいています。
自分なりに同友会で学ぶにあたってのモットーがあります。まず、一つめは学んだことは必ず実践する。学んだらメモをしっかりとって、重要だと思うところに印をして、自社の課題として書き出し、それを具体化・細分化します。それを最終的には自分のスケジュール表に入れておきます。スケジュールに入れるとさすがに実践します。ずっとやってきたのは良かったなと思います。
二つめは、役を頼まれたらハイかイエス。環境が許せば役員は必ずやったほうがいい。役員になると学びと気づきの量が桁違いに多くなります。同じ会費を払っているなら、役員をやらなければ損です。
三つめは、同友会の活動はとにかく「くったくなくやろう」。役員をしていると、いつもいいことばかりではありません。一生懸命やっても周囲が動かなかったり、誤解もあって批判を受けたり。それで会をやめる方もいます。しかし、それはもったいないなと思います。会社の社長ともなると、社員から文句を言われたりする機会がどんどん減ります。普通はややこしい話が耳には入ってこない。けれども、同友会の仲間は言いにくいこともどんどん言ってくれます。当たっていることであれば、素直に受け入れて直す。当たっていないことはただ単に笑って流す。そういう風にしてやってきました。
人間生きているといろいろな場面があります。そのすべての場面で、くったくなくいつも機嫌よく過ごせたら最高だなと思って、それを意識しています。

■同友会の理念と実践の整理

同友会の理念は三つあります。三つの理念がどういう関わりがあるかを自分なりにマトリックスに整理してみました。すると、ずいぶん学んだことがあるなと気づきました。
例えば、『自主・民主・連帯の精神』。会運営のキーワードです。これに中同協元会長の赤石さんや大田尭先生が整理された言葉を入れて、私自身がいちばんわかりやすい言葉で自分の理解を表現してみました。
『自主・民主・連帯の精神』ひとつとっても、いろいろなキーワードがあります。それを切り口として、自分の考え方:社員に対する考え方、社会に対する考え方が浮かび出てきます。せっかく先輩方が示してくださったキーワードなので使わない手はありません。
皆さんも同友会理念と実践を整理して書き出してみるといいです。「理念を実践で語りましょう」とよく言われますが、このようにマトリックスで書き出してみると結構やっていることがわかります。

■同友会理念に基づいて展開される運動

戦後、中小企業を取り巻く環境からいくつかの団体が生まれ、日本中小企業家同友会が設立されました。さらに五つの県に設立されて、全国協議会として中同協が1969年に設立されました。同友会では、設立当初から一貫して『自主・民主・連帯の精神』を大切にしてきています。どこかの県が取り組んだ運動を他の県でも取り入れて展開される形での運動は、中同協が協議会でなければ広がらなかったと思います。先輩方の知恵ですね。
同友会では『自主・民主・連帯の精神』を根底に据えて運営し活動が行われています。
会の『自主』主体性とは、会の運営、会員の自発的活動があげられます。

具体的には、同友会は他の団体と違い、会費で運営しています。経営上の課題を聞くと、多くの方があげる「社会保険料負担の軽減」ですが、予算をもらっている他団体からは要望は出てきません。同友会では会員の声を集めたアンケートをもとにこの点についても発信しています。
また、外部の人が驚かれるのは、『経営指針作成と実践の手引き』『企業変革支援プログラム』のようなテキストも会員が議論して作っていること。私たちにとっては当たり前でも、外部の人にとってはそれほど驚かれることなのです。
『民主』については、会運営では全員一致の原則を貫いています。意見が違えば、とことん話を聞き、本質的論議ができるようにしています。組織としての自浄作用も働きます。もちろん、意見を言う側にも聞く側にも「その意見の本質はこういうことだ」と整理し受け止められる見識が求められます。みんなで考えていい方向に進めることがお互いにとっての学びになります。ごちゃごちゃしたときほど、「そういう方向にいこうね」と大切にしています。
『連帯』は、同友会だけですべてのことを進められるわけではないので、それぞれの持つ機能や特徴を生かして連携をとりながら同じ課題に取り組むことも大切だということ。
また、同友会運動を支える観点から事務局と会員の関係についても確認しておきます。
同友会事務局の立ち位置と他の団体の事務局の立ち位置は全く違う。ひとつは主体者意識、もうひとつはセンター機能(情報を集めて発信する機能)です。会員にはできないことで、同友会のすばらしさを発信するのはとても重要なことです。この違いがわからずに事務局に接しているといいことはないので、詳細は『同友会運動発展のために』(中同協発行)に書いてありますから、役員交代の時など必ず読み合わせしていただきたいです。

■自社と地域でどう実践していくか

『自主・民主・連帯の精神』と、『労使見解』、『人間尊重の経営』をひきつけて考えてみたら、ようやく理解できたと言われる方もおられます。これらは無関係ではありません。
では、『自主・民主・連帯の精神』を自社で実践する・展開するとはどういうことでしょうか。
例えば、社員と話をして「自主的にやろうね」と言ってもわかりづらいです。私は反対の言葉として「自己卑下:どうせ自分なんか」と思って口にするのは絶対だめだと言っています。発言することで現実になってしまいます。また、「自分、どうせダメなんで」というのは努力をしないことを正当化することにもなるからです。

「他社依存:うまくいかないのは周囲のせい」というのも会社の中に結構あります。例をあげると営業の人がお客さんから要望を出されて、工場に問い合わせてはいるがなかなか進んでいない。確認したり話をつめたりせず「工場には言ってるあんですけど」で片づけている。これを社長が「君も大変だね」と言うと「他者依存」のマインドが消えません。良くなるための働きかけ・努力をしないのはいけません。同友会の中でも温度差をうめるための働きかけをしていないのは、隠れた「他者依存」です。
三つの目的のひとつ『よい会社』の要素のひとつに、価格決定権をあげました。自社の場合、「メーカーである」ことが『よい会社』のひとつの要素です。
創業者の父は「いつかはメーカーになる」とこだわっていました。もちろん創業当時は下請けでしたが、経産省に働きかけて当時なかった業界規格作りに取り組み、新しい商品を開発し、今では部品づくりといいながら価格決定権を持てるまでになりました。
『よい経営者』はどうでしょうか。労使見解にもあるように、「経営者の責任」をはずすわけにはいきません。
とても景気の悪かった第二次オイルショックのときに、自社で人員整理の話が出ました。雇用期限のあるパートさんの雇止めをすることになりました。言い渡しは工場長がすることになり、当時課長の私も同席しました。5、6人でしたが、みんながみんな泣きました。仕方がないとはいえ、重たいことだと強く感じました。仕方がないことにならないようしなければなりません。社員の人生設計にもかかわる重たいことです。
『良い経営者』と『民主』の視点から考えてみるとどうでしょう。
経営者としては、平等な人間観、違いの認識と理解・尊重のところは基礎的な部分です。「自分は代表取締役社長係です」とうまく表現した同友会の仲間がいましたが、社内の役割で、人間として偉いわけではありません。また、一人ひとり違いがあり、特徴を尊重することもこれからの時代大切です。
『民主』について、私なりのキーワードとして「周りをおとしめない」、『自主』のところに、「自分をおとしめない」という言葉がわかりやすいなと思っています。
わかりやすいのはSNSの誹謗中傷やパワハラ。周りをおとしめている象徴です。自分が使っている言葉ひとつとっても、自他ともにおとしめないよう、自信を持っていつでも・どこでもきちんと言葉を使っているでしょうか。周りをおとしめていることは自分もおとしめていることになりはしないか。よく考えないといけません。
『よい経営環境』を『民主』の観点から考えると同友会では「不公平取引の解消」「不公平税制の是正」などに取り組んでいます。
また、『連帯』についてもいろいろな事例があります。『よい経営環境』と『連帯』の観点でお話します。中同協では年に一回、連合と懇談をしています。『労使見解』を「あの時代に作ったのか」と驚かれて連合から懇談のお話をいただいたのが始まりです。不公正取引の動きについて、同友会でも発信するが、連合でもその立場で発信していく。同友会では、中小企業振興基本条例づくりに取り組んでいることを話をします。すると「それは何ですか?」とのことだったので、福岡県田川市の先進事例を紹介しました。すると「これはすごい」とのことで、連合も全国の方針に掲げ、東京都では連合の強い働きかけもあり、46番目に条例ができました。こういう風に同友会だけではなかなかできないが、他団体とも一致する部分では『連帯』しています。

■すべての人がすばらしさを発揮できるように

同友会運動が最終的にめざしているのは、すべての人がそのすばらしさを発揮できる社会だと思います。
同友会の会員企業には、生活保護を受けている人や犯罪歴のある人を受け入れている企業もたくさんあります。よくよく聞いてみると、好き好んでそういう風になりたくてなった人は一人もいないそうです。話を聞いて、「世のため、人のために一緒に働かないか」と投げかけて、「やる」という人を採用しているそうです。こういう社長さんが増えれば、社会は必ず良くなると思います。『自主・民主・連帯の精神』を大切にした我々の仲間が増えることがどれだけ大切かも押さえておきたいと思います。

三つの目的は1973年に成文化されました。『よい経営者をめざす』は、目標に掲げるにあたり相当論議があったそうです。当時は、中小企業経営者無能論がはびこっていた時代。『よい経営者をめざす』を掲げることは「それを認めるようなものだ」という意見があったそうです。結果、『よい経営者をめざす』は理念に入りました。今考えると、入っていて本当に良かったと思います。
今年の中小企業白書には、経営者の経営力向上が必要だと書いてあります。読んでいくと経営理念・経営計画を作って、人を大切にする経営をめざすことで経営力の向上につながると書いてあるんです。同友会のやってきたことがそのまま書いてある。
同友会が『よい経営者をめざす』ことを理念に掲げて、運動を展開することがどれだけ社会的に意味があることか。広く『よい経営者』を育てていくという使命も自分達にあるんだなと最近感じています。
『労使見解』は1975年に発表されました。当時の労働組合との激しい闘争のさなかに議論されました。会社をやめる人も自ら命を絶つ人もいた、そういう激しい時代です。
作成に携わった役員の中でいちばん若かった田山謙堂さん(元中同協顧問)は、『労使見解』にどうして当時各社で起こっていたさまざまなことを載せないのか先輩経営者に聞いたそうです。
すると「そういうもんじゃないんだよ」と言われたとのこと。そういう話も飲み込んで整理したのが『労使見解』なんですね。
『よい会社』とは何か。今は『21世紀型企業』として整理されています。同友会では、社会性と人間性に加えて科学性について言われます。
私の出身支部では合言葉で「道徳的な言葉でごまかすな」と言われていました。ことあるごとに「あなたのところの自己資本比率は?」「人時生産性は?」と聞かれます。ある時、ある人と話をしていて、「定時で帰れる会社にしたい。年収400万円支払える会社にしたい」とのこと。話を聞いてみるとその会社の人時生産性は2000円。計算すると定時で年間2000時間働くと400万円。この状態で400万円支払うと会社は絶対つぶれてしまいます。これがわかって、先ほどの話をしているかどうかは大きいです。社会性や人間性を担保する科学性はしっかりと押さえておかないといけないなと思います。いろいろな課題を解決するには、『労使見解』をベースにした経営指針の実践が確実です。

■経営指針に掲げて必ずやり続ける

経営指針作りでは、最初に経営理念を作ります。私は二代目で、義務感でやらなきゃいけないことはたくさんありましたが、特にやりたいこともなかった。でも、二つ決めました。
ひとつは、缶業界を全面的に支援しよう。もうひとつは、一人ひとりの社員が力を発揮できる会社にしようということです。
周囲を見回してみると、ひとつめを考えているのは業界の中で自分だけ、それをレベルを上げるために社員全員で考えてやっていこうと考えているのも自分だけだと思いました。これはすごいこと。義務感から使命感という喜びに変わった瞬間でした。それを掲げて努力するのは最高です。
経営指針で課題を掲げるにあたって、必要なこと。それは、掲げる課題は考えうるすべての課題を網羅して掲げることです。お客様が望むことは何か。品質、安定供給、コスト、品ぞろえ、技術支援、提案営業のそれぞれの切り口から、何が課題かを毎年掲げると、最初の年に低かったレベルが、続けていくとどの項目でも同業他社に負けない会社になります。
もうひとつは、最終的には一人ひとりがPDCAをまわせるようになりましょう。年間52週あるので、52週課題を設定しています。そこまで具体化・細分化して取り組んでいます。
月次決算では、必ず数字と課題進捗の両方を振り返るのがミソです。これも、やっている会社はほとんどないので、これだけでも相当な差別化になります。
そして、月次決算は一週間以内にやりましょう。月次決算は方針を定めるためにやるので、できる限り早く、目途としては一週間以内にやりましょうと言っています。そうしないと次の方針を定めるのが遅れて機会損失になりますから。
「そんなの無理ですよ」と言われますが、見渡してみると、1週間以内に月次決算をやっている会社と、20日すぎ・一か月遅れになっているところのふたつに分かれます。「やるか」「やらないか」です。絶対、月次決算を1週間以内にやれない理由はありません。
実際、私は前社長のときに経理担当をしていましたが、「1週間以内にやりたい」と言われて、時間をもらい、一か月ずつ工夫をしてやっていくと、できるようになりました。
毎月やっていることはすぐにはやめられません。他社がやっていないことをやれば差がつかないわけはありません。

■新たなステージへ誇りを持って

同友会は『国民や地域と共に歩む』ことをとても大切にしています。どうしてかというと、自分達が良くなることは、地域が良くなることにつながり、社会が良くなることに必ずつながるんだと当初から言っています。自助努力をしながら提言する組織はあまりありません。
自助努力をしながら、あるべき世の中の姿に対して、世の中に声をあげていく使命があり、もっと中小企業として誇りを持って、社会全体にも認識してもらい、努力しても報われない環境であれば改善していく努力をする。こういうことを通じて、中小企業の社会的地位を向上させ、生活を向上させていく。これを取り組んでいる最中です。同友会の運動の広がり、影響力といった力はついてきました。が、同友会によって社会が・地域が良くなったと自信を持って言えるかというと、まだまだです。ここが新たな同友会運動のステージで、現実的に地域や社会を変える先頭に立ちましょう。

我々は、経営者であると同時に、同友会の役員でもあります。両方とも誰もがなれるわけではありません。特別な存在で、世のため人のためになることを考えて事業をしています。これだけでもある意味崇高な活動です。
加えて、世の中のために同友会の活動をしていて、我々のやっていることは、世の中に大きな影響を及ぼす崇高な取り組みです。なので、誇りを持って取り組んでいきましょう。

(株)ヒロハマ 経営理念
一、缶パーツとその関連技術を通じて、缶の社会貢献を全面的に支援しよう
一、一人一人の持つすべての能力をともにベストの形で花開かせよう
一、現場で現物を見て現実を把握し、原理・原則に則って対処しよう
一、お客様と我々自身に還元するために、一切のムリ・ムダ・ムラを無くして最大の利益を追求しよう
一、国内外問わず、自らの可能性を追求し、仕事を通じて社会に貢献しよう

(株)ヒロハマ 経営理念 一、缶パーツとその関連技術を通じて、缶の社会貢献を全面的に支援しよう 一、一人一人の持つすべての能力をともにベストの形で花開かせよう 一、現場で現物を見て現実を把握し、原理・原則に則って対処しよう 一、お客様と我々自身に還元するために、一切のムリ・ムダ・ムラを無くして最大の利益を追求しよう 一、国内外問わず、自らの可能性を追求し、仕事を通じて社会に貢献しよう

<会社概要>(株)ヒロハマ
本社:東京都墨田区石原2-28-11  資本金:6,250万円
創業:昭和22(1947)年11月  法人設立:昭和26(1951)年2月
従業員数:130名
取扱製品:1 缶パーツ一式(キャップ・口金・手かん・押え金等)
2 その他付属品一式
会社URL:https://cap-hirohama.com/