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会員の経営状況~経営環境アンケート調査2015より~ 「人」が大きな経営課題に

政策委員会(佐藤清子委員長)は、一〇月一三日から二週間、毎年恒例のアンケート調査を実施しました。三四六人の会員の皆さんの回答の要点を紹介します。
(※DI=傾向をみるための数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、△100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)

経営状況は少しずつ改善

 消費税増税や中国経済の減速、円安の影響などの逆風もありますが、株高や原油安、公共投資増などもあり、中小企業の経営は少しずつ改善しています。今回の調査で、経営状況DI(※)は+12で、昨年に比べ10ポイント良くなっています。改善の傾向は建設関連が+24と最も高く、サービス業+12、製造業+11と続き、もっとも低かったのは卸・小売業の+3でした。もっともアンケートにはありがちな「業績の悪い企業は答えにくい」傾向を割り引く必要があるでしょう。利益面では、55%の企業が黒字と答えました。

一番の問題は「従業員の不足」

 経営上の問題点のトップは「従業員の不足」(39%)でした。寄せられたコメントには「仕事量はある程度確保できているが、人手不足(下請け業者確保含む)により、受注できない状況」、「一〇年後、二〇年後の会社を担ってくれる若手(特に新卒)の採用が極めて困難」など、厳しい声が寄せられています。じわりと上昇しているのが「税・社会保険の負担増」で、09年には8%でしたが、今回は17%と二倍になっています。比率は高いものの、減っているのは「同業者間の価格競争の激化」(09年51%→今回35%)、「民間需要の停滞」(09年42%→今回20%)でした。

経営上の力点に「社員教育」

 40%の会員が「社員教育」を経営上の力点にあげました。過去一〇年間では「付加価値の増大」(56%)とともに一番高くなっており、顧客のニーズを引き出し、ニーズにそった仕事のできる社員さんを育てたいとの思いが表れているようです。
 では「社員教育」はどのような取り組みをしているかとの問いに、①OJT(仕事をしながらの教育)の実施が66%、②社内での社員研修の実施(40%)と続いているように社内の社員教育が大半を占め、これから社内でどんな能力を身につけて行けばいいのかを示す、経営理念や経営方針の確立が大切になっています。

来春の賃上げを決めているのは約四割

 「今春賃上げをした」と答えたのは64%、「来春も賃上げする」としたのは39%で、「来春はわからない」と答えたのは36%でした。
 「毎年わずかずつだが必ず昇給している」、「社員のモチベーションアップ。社員のスキルが上がれば売り上げも見込めるので」、「数年間損失を出しており、今年は利益が出そうだが、将来は不透明なので、社員への還元は賞与で考えている」、「利益が確保できないのに賃上げも何もない。物価が上がったら必要経費も増大するので『アベノミクス』自体に不信感あり」など、多くのコメントが寄せられました。

雇用問題をしっかり研究しよう

 今回の調査で雇用問題が中小企業の経営問題になっていることが浮き彫りになりました。アンケートを踏まえて神奈川大学の大林弘道名誉教授は、「中小企業の雇用問題はもともと対処療法のきかない本質的問題で、今後も長期構造的な問題として継続する可能性がある。一〇月発表の失業率(3.1%)の低さや安倍首相の最低賃金一〇〇〇円表明は、各社の経営問題だけでなく、同友会としても中小企業経営の基礎・本質から改めて検討することが要請されている問題ではないか」とコメント、雇用問題について究明する必要があるとの指摘があったことを紹介しておきます。

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